#22/20世紀を駆け抜ける

『メキシコ−わが大地』 リニー・デヴリエス 横山貞子訳 研究社

 アメリカ生まれのオランダ系女性の自伝。この人、まさに行動の人だ。1937年、ヨーロッパにヒトラーのファシズムが台頭し始めた頃、ニューヨークで看護婦をしていた彼女は、志願してスペイン内戦の共和派の医療班に参加し、最前線で活動する。そしてようやく米国に帰国すると、今度は戦後のマッカーシーによる「赤狩り」に追われ、メキシコへと逃げ延びる。メキシコでは、これもまた志願して、オアハカ州の、ロバで何日もかけて行かなければならない僻地へ赴き、公衆衛生学の知識を普及して回る。
「進歩とは自分が置かれた状況そのものを変えることからはじめるべき」というモットーを持つ彼女は、その時その時の最も困難と思われる状況へと、頭から飛び込んでいくのだ。

 20世紀の世界が抱え込んだ様々な難題。繁栄と貧困、民族問題、戦争、イデオロギー、差別、宗教の対立、移民、自然破壊、疫病など、実にそのすべてに、彼女の人生が深くかかわっているのには驚かされる。しかも、解説によると、本書では割愛された幼少・青春時代の部分には、深刻な家庭崩壊の経緯が語られているというのだ。まさに、20世紀という時代を体現し、駆け抜けた女性の一代記。しかも、そのフットワークは軽やかで、未来への希望に満ちている。

 そういえばもう一つ、20世紀には女性の地位の問題があった。彼女もまた、多くの男性の旧弊に悩まされる。そんな中で、彼女が尊敬に値すると認めたある男性について、こんなふうに評しているのが印象的。「ほかのおおかたの男たちとちがって、彼は絶えまなく自分のエゴにこびてもらう必要のない人だった」・・・・なるほど。
(1975年初版)

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