#28/野蛮なのはどちら?

『瀕死の森、勇士の槍』 ジョー・ケイン 池田真紀子訳 新潮文庫

 南米エクアドルのアマゾン流域地帯に、石油が発見された。ただちに、アメリカのオイル資本が、大挙して開発に乗り出した。ところがその地方こそ、生息する動植物の種類からすると「地球上でもっとも豊かな生物の楽園」と言われる場所だった。また、ウアオラニー族をはじめとする、いくつかの先住民族が大昔から住んでいる土地だった。
 石油会社の手で、ジャングルを切り開いて道路が通され、入植地ができ、油井が掘られ、パイプラインが敷かれた。同時に、廃油や廃棄物などの有毒汚染物質が毎日大量に垂れ流されて、森を枯らし、川を黒く染め、住民を病気にした。

 アメリカ人ジャーナリストの筆者は、その現場を見ようと、油田開発に反対して立ち上がった森の民ウアオラニー族の村へ、単身飛び込んでいく。もちろん、反対運動は困難を極め、陰謀と暴力と誤解が渦を巻いて、収拾がつかない。言葉は悪いが、それは一種のドタバタ劇のような様相を呈してくる。森の外の人間とウアオラニーたちとのやりとりは、まるで何人ものミスター・ビーンが登場するコメディのようだ。しかし、だからこそ、森の人々の素朴でまっとうな生きる権利への主張が、ストレートに伝わってくる。

 その森の近くに20年以上住むというスペイン人神父の言葉。「ウアオラニー族が人を殺すとき、そこには神聖な秩序があります。ですが、アメリカ人は自分たちが人を殺していることさえ気がつかないまま殺します。いえ、気づきたくないのでしょうね。それでも、一つの民族を破滅に追いやることには変わりありません。で、あなたはどう思われますか? 野蛮なのはどちらです?」
(1999年初版)

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