#39/憂い顔の革命家

『サンディーノのこどもたち』 吉田ルイ子 大月書店

 1984年、サンディニスタ革命政権下のニカラグアを取材した筆者は、日本へ帰ると、問い合わせてくるマスコミをすべて拒否して、「私自身がこの目で視、肌で感じてきたこと」をこの1冊の本に書き下ろしたそうだ。
 当時の若々しい革命政権の息吹が、飾らない文章と、そして何よりも光と影のコントラストの強い写真の数々によって、伝わってくる。

 ニカラグア民族解放の父、アウグスト・セサル・サンディーノの肖像画を、筆者が初めて見た時の感想が面白い。「−−カストロやチェ・ゲバラのような、精悍で力強い英雄像とはほど遠い。麦わら帽子にカウボーイブーツをはいて、ちょっと下向きかげんのサンディーノ。ヒーローというより、善良な農民、あるいは、インディオとの混血独特の、憂いをふくむ表情−−」。この印象は、筆者の出会った若き指導者たちの、素朴ではにかんだような印象と、重なってくる。後年、その変質をとりざたされる当時のオルテガ大統領も、「歯切れの悪い低い声で遠慮がちに下をむいて話す」人物として紹介されている。

 本の最後に登場する、58歳の近藤さんという女性が印象深い。ニカラグア生まれの彼女は、日本で教育を受け、仕事も結婚もしたのだが、子供が独立したと同時に、単身故郷に戻ってきたのだ。他に日本人など全くいないカリブ海沿岸の小さな町で、一人暮らしをする、「自立したすてきなおばさま」だそうだ。小さな写真が添えられているが、本当に、背筋のすっきりと伸びた美しい女性だ。
(1985年初版)

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