#42/パリからの手紙

『フリーダ・カーロ/引き裂かれた自画像』 堀尾真紀子 中公文庫

 この本の筆者は、1987年にメキシコシティの近代美術館で、初めてフリーダ・カーロの絵を見て、強い衝撃を受け、それ以後「その感覚の正体を執拗に追い求め」る旅に出たという。その結実が本書だ。偶然だが、私も、その同じ年に同じ場所で同じ絵を見て、大変なショックを受けた。その絵「二人のフリーダ」は、同時代の例えばダリやキリコが、おとなしく見えてしまうほどの、異様な迫力をもった傑作だ。

 フリーダの生涯は、病気と事故による肉体的な苦悩、夫ディエゴ・リベラとの愛憎、華やかな男性遍歴などで有名だが、私はこの本でいくつかの彼女の別の側面を知った。
 その一つは、彼女には「ロス・フリードス」と呼ばれる四人の弟子がいたということ。強烈な個性の持ち主である画家に、はたして絵が教えられたのか? と思ってしまうが、その型破りな授業を通して、師弟たちは強い信頼で結ばれ、助け合い、後年ロス・フリードスたちは立派な芸術家に育ったという。

 もう一つは、シュルレアリストへの反発。フリーダはアンドレ・ブルトンに招かれて、パリの彼のアパートに滞在したのだが、その折友人に宛てて送った手紙。「ここの連中がどういう代物か、あなたには想像もつかないでしょうね。吐気を催すほどです。奴らのあまりにそらぞらしいインテリぶり、救いようのないくだらなさには、これ以上我慢なりません。−中略− 連中はそのデンとした尻を何時間も暖めながら「カフェ」とやらに座り込み、「文化」「芸術」「革命」その他もろもろについて、いつ果てるともなくしゃべりまくり…−後略−」面白い。
(1991年初版 中央公論社)

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