#50/とんでもない贈り物

『銃・病原菌・鉄』(上)(下) ジャレド・ダイアモンド 倉骨彰訳 草思社

 自然科学者の書いた、1万3千年にわたる人類の歴史。アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカなどの、現在の世界が、先進地域と後進地域に分かれ、豊かさや技術や生活環境において格差ができてしまったのは、また、支配する者とされる者に分かれてしまったのは、なぜだろうか? その謎を、人々が村落生活をはじめた頃の時代にまで遡り、考察していく。

 人類の歴史はとてつもなく複雑な要素から成り立っているわけだが、筆者は、科学者らしく非常に長いスパンでものごとをとらえ、現象を一般化していく。その中でも、最もスケールが大きく驚かされるのは、「大地の広がる方向と住民の運命」という発想だろう。ヨーロッパを含むユーラシア大陸は、東西に長く広がり、それに比べ、アフリカや南北アメリカ大陸は、南北に長く伸びている。栽培植物や家畜、それに伴う技術は、経度を同じくする似通った自然環境の続く東西方向へは、瞬く間に伝わるが、寒暖の差や地理的条件の異なる南北方向へは、伝播は非常に困難である。−−というわけだ。メソポタミアに発する文明が、遠方まで拡散して進化したのに対し、アフリカやアメリカの文明は、地域ごとに特殊な発展の仕方をするべく運命づけられていた…。

 タイトルにある「病原菌」も、やはりユーラシアで発展した牧畜を源としている。南北アメリカの先住民社会は、少数のスペイン人征服者によって滅ぼされたわけだが、その大きな要因は武力よりも伝染病であった。本書にもその経緯は詳しい。もともと2千万人いたメキシコ先住民は、天然痘の大流行で、百年後には160万人に減ってしまったという。現在の合衆国や南米でも同じことが起こっている。まさにそれは、「ヨーロッパ人のとんでもない贈り物」として、新大陸に届けられたものだった。
(2000年発行)

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