今回の衆議院総選挙、初めてインターネットの活用が騒がれました。しかし、日本では、インターネットでのホームページやブログを利用した選挙活動は、公職選挙法で殆ど禁止されています。
日本ではインターネットを利用した選挙活動にはかなり制限があり、選挙運動の自由度が高く、各候補ともインターネット駆使して選挙戦を戦う米国とは大きく異なっています。
公職選挙法の中に、インターネットが普及した現代社会に適合しない部分が出てきて、問題点がさまざまな形で浮き彫りになった総選挙だったと思います。
公職選挙法では、規定されたはがきやビラを除く「文書図画」の配布を禁じており、選挙期間中、候補者や政党名を記載したホームページやメールマガジンの配信も違反になります。このため、各党は衆院選が公示された先月30日以降、ホームページの更新を止めました。
(注)コンピュータ画面上の表示は「文書図面」であり、ホームページ、ブログも、この「文書図面」に当たると解釈されています。
以上の事から、今回の衆院選では各党の間に、公職選挙法で禁じられているインターネットによる選挙運動の解禁を求める声が上がっています。
自民党は「選挙でのネット利用を前向きに検討していく」。また、民主党もマニフェスト(政権公約)で、解禁を明記、他の党も「カネのかからない選挙を目指す公選法の趣旨にもかなう」、「選挙活動は基本的に制限すべきでない」などとの立場です。
一方、米国では、各候補者の選挙事務所が「選挙運動ホームページ」を立ち上げ、投票日まで日々更新し、内容も、候補者の履歴に始まり、各争点に対する候補者のスタンス、最新の演説・集会スケジュール、直近・過去の演説の実録など盛りだくさんです。
有名メディア調査機関のピュー・リサーチ・センターの今春の調べでは、「大統領選の情報収集にインターネットを使った」と答えた人が29%と、2年前の中間選挙時の13%に比べ2倍以上に跳ね上がっています。
選挙へのインターネット活用では、米国と日本では雲泥の差がありますね。
なお、総務省は、選挙運動でのインターネットの利用について検討することを目的に、「IT時代の選挙運動に関する研究会」を、2001年10月9日に発足させています。詳細情報は下記にあります。
IT時代の選挙運動に関する研究会について(総務省)
http://www.soumu.go.jp/singi/it_senkyo.html
上記のホームページにある2002年8月のレポートでは、次の説明があります。
「インターネットを、選挙運動に導入することで、候補者情報の充実、政治参加の促進、有権者と候補者の直接対話の実現、金のかからない選挙の実現、など計り知れない効果が期待できる。」
また、このレポートでは、インターネットにおける、なりすましや誹謗中傷についての対策が必要として、以下が提案されています。
(1) インターネット上の情報保護に対する対策
候補者自身のホームページに間違いがないか等の”なりすましに
対する対策”、”ホームページの改竄に対する対策”
(2) インターネット上での誹謗中傷に対する対策
インターネットの利用形態を、情報発信者を追跡しやすいホームページ
に限定、ホームページ開設者の連絡先の表示義務、虚偽事項公表罪の
適用等
この研究会がスタートしてから早4年が経過していますが、公職選挙法の見直し等、具体的な改善には、いまだ結びついていないようです。
しかし、この間に、インターネットは、格段に普及し、更にブログという新しい情報発信手段も普及しています。一刻も早く、時代にマッチした仕組み作りを進めて欲しいものです。
ただ、インターネットで選挙活動ができるようになると、情報を得られる人と得られない人との格差が生じる「デジタルデバイド」(情報格差)の問題が発生します。
インターネットで選挙活動が解禁されれば、情報伝達が容易なインターネットに選挙運動がシフトしていき、その結果、インターネットを利用できない人が情報を得にくくなることが充分予想されます。そのため、「デジタルデバイド」の解消をどうするかも充分検討する必要があります。
しかし、この「デジタルデバイド」の問題は、インターネットでの選挙活動以外にも、ますます日常生活に入り込んできているインターネットを活用する為には、今後解決すべき重要な問題です。
なお、政府は、「2005年までに世界最先端のIT国家になる」ことを目指し、「e-Japan戦略」を進めていますが、ブロードバンド等のハードウェアの普及は進んでも、今回の公職選挙法等のソフト面の改善は、なかなか進んでいないようです。「世界最先端のIT国家」に相応しい、仕組み作りも進めて欲しいものです。
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【公職選挙法とインターネット】
第一に、公職選挙法では、選挙運動期間外の一切の選挙運動は禁止されています。その為、ホームページやブログによる、選挙運動(特定の候補者や政党への投票・不投票を呼びかける行為)はできません。【公職選挙法 第129条】
第二に、選挙運動期間内であっても、ホームページやブログによる、選挙運動は、「法定外の文書図画の頒布(はんぷ)」にあたるため禁止されています。【公職選挙法 第142条の2】
第三に、公職選挙法では、人気投票の経過又は結果を公表してはならないと規定されています。そのため、ホームページやブログで当選者を予測する人気投票を行ったり結果を掲載する行為も禁止されます。
【公職選挙法 第138条の3】
総務省が2002年にまとめた「IT時代の選挙運動に関する研究会報告書」によると、コンピュータ画面上の表示は「文書図面」であり、不特定・多数人の利用を期待してホームページを開設することは、「文書図面の頒布(はんぷ)に該当する」と解されています。ブログも同じ解釈になります。
公職選挙法
http://www.houko.com/00/01/S25/100.HTM#top
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■編集後記
今回の衆議院選挙、これまでとは違い、インターネットでの選挙活動がブログも含め、かなり話題になりました。
ホームページ、ブログでの情報掲載に関して、これほど法律の壁が、あるとは思いませんでした。選挙に関する情報掲載についても単純に考えていましたが、身近でなかった”公職選挙法”が意外にも大きな壁であることには正直驚きました。
現在の”公職選挙法”では、選挙活動にホームページ・ブログが殆ど使えず、現代にはマッチしていないようです。
政府は「2005年までに世界最先端のIT国家になる」ことを目標に、2001年1月から「e-Japan戦略」を推進していますが、まだまだ、これにはほど遠いようですね。