チタンの効力って本当?
 最近の人は、昔より「健康」と言うことに異常な興味を持っているような気がします。テレビや雑誌で取り上げられる様々な健康グッズは、とてもたくさんありますが、それら全てに、言われるとおりの効果があるのでしょうか?
 今回は、私の知人も自信を持っておすすめのチタン製品について、考えてみることにしました。肩こりが治った、と大評判らしいです。


チタンが体にいいわけ
 チタンは、体にとってどんな効果があるのか、そして、なぜチタンは体にいいのか。それらについて早速検索エンジンで調べてみると、次のような説明に行き着きました。

チタンは、最もイオン化傾向が高い金属なので、チタンを身につけることで身体を流れる電流の乱れが整えられ血流が良くなり、流れる血液も浄化され、これらの効果を生みだしている
「イオン化傾向の強い」チタンは、人体に装着することで電流が効果的に発生し、疲労回復、痛みの緩和、運動能力の向上などの効果があると言われています。
 このほか、様々なホームページでチタンのことが紹介されていますが、そのキーワードは、
@軽くて強く、腐食しにくい上、金属アレルギーが出にくい。
Aチタンはイオン化傾向が強く、生体電流を整える力がある。
Bその結果、血流がよくなり、様々な効果を発生させる。

 ということになるでしょうか。そして、なぜチタンは体にいいのか、説明してくれているページを発見しました。こちらになるのですが、やはりキーワードは、「生体電流」とチタンの「イオン化傾向」にあるようです。
 なるほど、確かに細胞に微弱な電流が流れているという話は、どこかで聞いたことがあります。それを整えることによって、体の調子を上げるという理屈は、何となくわかります。


イオン化傾向って何?
 さて、まずはイオン化傾向というキーワードから考えていきましょう。チタンがイオン化傾向の大きい金属だ、言うことらしいのですが、では、そもそもイオン化傾向というのはどういう事なのでしょうか?
 ずいぶん昔に理科でならったような記憶があるのですが、そんな不確かな記憶に頼ってはいられず、調べたところ、こんなところを発見しました。ついでにこんなところもありました。
 イオン化傾向とは、金属が水または水溶液中で電子を放出し、陽イオンになろうとする性質のことであり、それが大きいと言うことは、イオンになりやすい、ということは電子を放出しやすい、つまり、いわゆる「酸化」されやすいと言うことになるわけです。
 おお! チタンが酸化されやすいと言うことは、つまり、電子を放出しやすいということになるわけで、その電子が、生体電流を整えるはたらきをするのでしょうか!
 しかし、そうなると、チタンが全て酸化されてしまうと、効果はなくなってしまうのでしょうか? そして、空気中でも酸化してしまうのでしょうか? アル ミニウムはイオン化傾向の強い金属ですが、表面が酸化されるとそれ以上は酸化されず、「さびない」状態になってしまいます。さびの浮いたチタンってあんま り見たこと無いんですけど、表面に膜を張ったような状態になってそれ以上酸化が進まないアルミニウムと違って、鉄のように芯までずーっと酸化反応が進む金 属なんでしょうか。あ、でも、さびにくいって特徴にあげてありましたね。
 どちらにしろ、チタンが電流を発生させることは、なかなか考えにくいことになります。


生体電流とは?
 次に、もう一つのキーワード、「生体電流」について考えてみることにしましょう。そもそも、本当に細胞に電気が流れているのでしょうか? まず、それを確認しなくてはなりません。
 というわけで、早速手に入れました、『絵でわかる細胞の世界』(黒谷明美・著 講談社 2001年)。この本の中に、果たして生体電流のことが載ってい るのか。結論から言うと、「生体電流」の話はありませんでしたが、細胞が電気を発生させることが載っていました。以下に引用すると、

「生体膜の最も重要な役割は、物質を通すか通さないか(透過性)の選択をすることです。・・・(中 略)・・・また、さまざまなイオンの透過性を管理すると、膜の内外にイオンの濃度差ができ、電位差(膜電位)が生じます。膜電位は、細胞がさまざまな情報 を電気的なシグナルに変えて伝達するしくみに不可欠です。」と、106ページにあります。

 さらに、この膜電位について、同書112ページにより詳しく説明があります。これも引用させてもらうと、
「動物細胞の中では、ふつう、プラスの電荷をもったカリウムイオンと、マイナス電化をもった有機分子がほぼ つり合っています。ところが、細胞膜にはカリウムイオンだけが通るカリウムチャンネルがあるので、拡散によって細胞の外に出ていきます。細胞内にはマイナ スのイオンが取り残され、細胞の外に比べてマイナスになります。
 こうしてできた膜の内外での電位差を細胞外を0mVとして、で電位で表現し、「膜電位(静止膜電位)」と言います。静止膜電位の大きさは、生物や細胞の種類によって違い、-20から-200mVくらいです。」

 
 長くなりましたが、イオンの移動が、結果として電流になる、ということになるわけで、体の外にあるチタン(イオン)の出番はあまりなさそうです。

 しかし、細胞が様々な情報を電気的なシグナルに変えるとあるのですから、ここに、何か秘密があるのかもしれません。
 細胞が刺激を受けると、それがイオンチャンネルに伝えられ、イオンチャンネルが開き、プラスの電荷をもったイオンが細胞内に流れ込み、このシグナルは神 経細胞、そして最終的に脳に届くわけです。これにも膜電位が関わってくるのですが、あくまで感覚細胞がその感覚を脳に伝えるために使うシグナルで、感覚細 胞から神経細胞へ、そして脳へと伝わるのですから、別に筋肉や血管に作用するわけではなさそうです。


 と、ここまで考えてきましたが、売り文句の「イオン化傾向」と「生体電流」は肩こり解決にはあまり関係ないということになりそうです。しかし、所詮素人 考え、何か落としていることもあるかもしれません。どうか、この分野に詳しい人、間違っていることがあったらお知らせください。
 私の結論。肩がこったら、素直にぬるいお風呂にながーく浸かって、のんびりしましょう。チタン買うぐらいなら、温泉に行きます。