古典にみる色 ー 襲(かさね)の色目ー


平安時代、宮廷の人々が折々の自然の彩りをとりいれ創造した襲の色目。
衣(袷)の表の布と裏の布、「表」と「裏」を重ねて生まれる色合いを襲の色目といいます。
また、衣を何枚かずらして重ねてみえる色合いを襲の色目ということもあります。

ここでは前者の衣の表の布と裏の布の襲の色目を少しご紹介します。

襲の色目は「枕草子」「源氏物語」「栄華物語」などの古典・王朝文学に、
折々の自然・風物と姫君や公達、女房、童たちの衣装を相応させて描写し、
物語りにいっそうの華やかさを与えています。


襲の色目に名づけられた名をみると
桜、山吹、撫子、竜胆、落栗などの草花の名や自然の営みのものが多々。
自然の彩りを布に表しまとうこと、また部屋の調度も揃えて
、自然と一体となって季節を愛でていたようです。


着物は文様などの季節を先取りして着たりする楽しみがあります。
そうは言っても季節ごとに揃えるのは大変ですから、
着物の色と半襟や伊達襟で襟もとの色を、
季節にあった襲の色目で演出するというのも奥ゆかしいです。  

季節 襲の名称と着る時期 襲の表  襲の裏
   ●桜がさね
桜の花の薄く紅を帯びた色合いを模したもの。
表は白、裏は紅色。
旧暦2月・3月ごろ。
         
●桜もえぎ
桜の花と葉、ちょうど葉桜の趣きだろうか。
表は萌黄色。裏は紅色。
旧暦2月・3月ごろ。
●裏山吹
春は黄色い花々が目立ちます。
表は黄色、裏は濃い山吹色。
旧暦11月から翌3月ごろ。
          
●梅がさね
まだ寒い春花を咲かせる紅梅の色を模したもの。
表は濃い紅梅色、裏は紅梅色。旧暦11月から翌3月ごろ。
●躑躅(つつじ)
躑躅の燃える赤のようすを模したもの。
表は少し濃い赤の蘇芳(すおう)色。裏は青。
旧暦3月ごろ。
●柳がさね
柳のやわらかく芽吹いた若葉を模したもの。
表は光沢のある白螢(しろみがき)。裏は萌黄色。旧暦1月〜4月ごろ。
  ●菖蒲がさね
晴れわたる五月の空に映える菖蒲の花を真似て。
表は青、裏は濃い紅梅色。旧暦4.5月ごろ。
●卯の花がさね
卯の花の葉の緑と白い花を模したもの。
表は白。裏は萌黄色。旧暦4、5月ごろ。
●蓬(よもぎ)
蓬の葉の色を模したもの。
表は萌黄色、裏は濃い黄色。旧暦5月ごろ。
●葵がさね
葉の緑と花の紅紫色を模したもの。
表は薄青。裏は薄紫色。旧暦5月ごろ。
●若楓(わかかえで)
芽吹きだした楓の芽の赤と若葉の緑。
表は薄萌黄色。裏は薄紅色。
●撫子がさね
可憐な撫子の紫がかった花の色を模したもの。
表は紅色。裏は薄紫色。
  ●萩がさね
咲き零れる薄紫の花の色を模したもの。
表は紫色。裏は薄紫色。旧暦7月から9月。
●桔梗
紫の花の色を模したもの。 表は紫がかった青の二藍色。裏は青。
旧暦8月ごろ。二藍とは紅藍(紅花)と青藍(藍草)の2種の藍で染めたもの。
●竜胆
青紫色の花を模したもの。
表は濃い縹(はなだ)色。表は紫色。旧暦9月から11月。
●菊がさね
霜にうたれ紫に色の変わった白菊を模したもの。
表は白。裏は紫色。旧暦9月から11月ごろ。
●紅葉がさね
赤く色づいた紅葉の彩りを模したもの。
表は赤。裏は濃い赤。
●落栗(おちぐり)
晩秋、熟して落ちた栗の実の色を模したもの。
表は蘇芳色。裏は薄茶の香色(こういろ)。
 冬 ●氷がさね
息も白くなった冬、氷のはった様子を模したもの。
表は白螢。裏は模様のない白無紋。
●枯野がさね
冬の乾いた野原と空を模したものだろうか。
表は香色。裏は青。

「雑(ざつ)」と呼ばれる四季を通じて着用する襲の色目、季節をまたいで着用する襲の色目もありました。

四季を通じては表裏とも縹色の縹、表裏とも二藍の二藍がさね、表裏とも紅色の紅(くれない)。


季節をまたぐものとしては春から夏にかけて表裏とも萌黄色の萌黄、
冬から春にかけての表は蘇芳色、裏は縹の葡萄染(えびぞめ)、表は青、裏は紫色の松葉がさね。

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