ライトノベル 悲鳴伝 レビュー

悲鳴伝 (講談社ノベルス) タイトル 悲鳴伝
レーベル 講談社ノベルス
著者 西尾維新
発売日 2012年04月26日
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評価


レビュー
「そらからくんはあなたには、絶対にあげない。そらからくんは私の犬だから。私のペットだから」

彼の名は空々空。
どこにでもいない十三歳の少年。
風変わりな少女、剣藤犬个が現れたとき、日常かもしれなかった彼の何かは終わりを告げた。
ひどく壮大で、途轍もなく荒唐無稽で、しかし意外とよく聞く物語は、そんな終わりを合図に幕を開ける。
人類を救うため巨悪に立ち向かう英雄は、果たして死ぬまで戦うことができるのか!?
(OHPより抜粋)

悪の怪人と戦うヒーローになることを余儀なくされた少年と、ヒーロー失格の烙印を押された少女を描いた西尾維新最新作にて最長巨編。

“西尾維新史上、最長巨編にして、新たなる英雄譚”と銘打たれた本作は全8話(517ページ)からなるヒーローもの。
想像していたよりもボリュームは多くなかったのですが、内容的にはいかにも西尾維新氏らしいエピソードで構成されており読み応えがありましたね。
特にラストの終わり方は非常に私好みで大満足。
やはりこういう恋愛描写のあるヒーローものはグッときますね♪

各話のタイトルは以下の通り。

第1話「ヒーロー誕生!地球の悲鳴が聞こえるか」
第2話「戦え!ぼくらの英雄グロテスク」
第3話「届け必殺!グロテスキック」
第4話「頼れる仲間だ!狼の血を引く少女」
第5話「炎の戦士!熱き血潮の燃える魂!」
第6話「幼稚園が危ない!二人の女剣士」
第7話「さらば友よ!空を翔けるヒーロー(前編)」
第8話「さらば友よ!空を翔けるヒーロー(後編)」

これだけ見ると、仮面ライダーや戦隊ものみたいな作品を想像するかと思いますが、あの西尾維新氏が王道なヒーローものなんて書くはずはなく、実際の内容はまったく別物。
もちろんタイトルがまったく嘘っぱちというわけではなく、マクロな視点で見れば決して間違ったことは書いていません。
例えるなら、某日テレが最近やらかした「オセロ中島騒動の占い師が出演すると煽っておいて別の占い師が登場した」みたいな感じ。

ま、まあ、ぶっちゃけタイトル詐欺と言っても過言ではないかもしれません(汗

それでも某日テレの件とは違ってネガティブな感情はまったく抱きません。
むしろこういう遊び心…というか天の邪鬼な感じはいかにも西尾維新氏らしくて思わずニヤッとしてしまったくらいですからね(笑
「刀語」の錆白兵戦を許容できる人なら「西尾さんらしいなぁ」と一笑に付せるのではないかと思います。

(閑話休題)

さて、肝心のストーリーですが、ヒーローの適性を見出された少年・空々空が悪と戦う組織“地球撲滅軍”にスカウトされるところから物語は始まります。
と、こんな風に大まかな概要だけ書くと一般的なヒーローもののプロローグと大差ないように思えますが、内容の詳細を書くとまるで違った印象になります。

冒頭(第1話)の内容について詳しく説明するとこんな感じ。
(※以下、第1話のネタバレにつき注意)


ヒーローの適性を見出された少年・空々空は、ある日悪と戦う組織“地球撲滅軍”に所属する少女・剣藤犬个に一服盛られ高熱を出して眠ってるうちに、家族をはじめ友人、知人、親戚といった関係者を“地球撲滅軍”の手で皆殺しにされ、“地球撲滅軍”でヒーローとして戦うことを余儀なくされる──


(※第1話のネタバレはここまで)

最初の説明も決して間違っているわけではないけど、説明から想像できる内容はまるで違いますよね。
第2話以降も一事が万事こんな感じ。
あらすじに“巨悪に立ち向かう”と書いてありますが、作中で主人公が悪の怪人と戦うのは僅かに1度、しかもどっちが悪かわからないような戦い方をするんですよね。
基本的に残酷でえげつないエピソードが多く、各話タイトルから想像できる内容とはまるで異なる話になっていると思ってください。


キャラについてですが、西尾維新作品らしく名前も性格も非常に個性的なキャラが揃っています。
中でもお気に入りは『寸刻み』こと剣藤犬个

最初はどこかネジがズレてる性格が非常に不気味だったんですが、同棲生活を続ける中で彼女の内面が明らかになると次第に愛着が湧いてきて、ヒロインに昇格したラスト2話で一気に持っていかれました。
ヒーロー失格の烙印を押された少女がヒーローに惹かれていくなんて話、胸キュンにもほどがあるだろと小一時間(r
第5話ラストから犬个ちゃんの可愛さが目立ち始め、それ以降はニヤニヤ出来るようになるので、例え第1話から続くエグイエピソードに心が折れかけてもそこまでは頑張って辿りついてください。

男キャラでは飢皿木博士が好きですね。
終盤で悲壮な決意を持って『蒟蒻』に相対する姿には思わずグッときました。
キャラ設定上、単なるアドバイザー的な立場に終始するかと思っていたんですが、まさかあんな役回りを演じることになるとは思いませんでした。
や、確かに冒頭で伏線を張ってたけど、西尾維新氏の場合、散々思わせぶりな伏線を張っておいて放置することも多々あるのでまったく気にとめてなかったですよ。
てか、下手したら再登場すらないんじゃないかと思ってましたからね(笑

上記二人のエピソードを際立たせたという意味で、名バイプレイヤーと言えるのが狼ちゃんこと左在存。
この子は設定的にも性格的にもかなり私好みだったんですが、如何せん登場シーンが少なすぎてキャラ単体の印象が薄くなってしまったのが残念ですね。


最後に総評。
良くも悪くも西尾維新氏らしい作品です。
ヒーローものらしからぬ残酷でエグイ描写が多々あるので好き嫌いは分かれるかもしれませんが、「戯言シリーズ」「新本格魔法少女りすか」などが好きな西尾維新作品の昔からのファンなら間違いなく惹かれる作品だと思います。

欲を言えば続きを書いて欲しいところですが、残ったキャラだけで物語を紡ぐのはちょっと難しいかな?
でも西尾維新氏ならこんな状況からでも物語をでっち上げる(笑)ことはできると思うので、ダメ元でアンケートに続編希望と書いて送ってみます。




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