4月より獣医東洋医学会は、日本伝統獣医学会に改称されました!
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本会の復活と門出

 獣医東洋医学の復活と新たなる門出を祝して
 本好 茂一 (名誉会長)

 

わが国の医療は東洋医学から始まった

わが国の機構は大化の改新(645年)を境に急速に体系化された。古代中国秦漢の時代から神仙思想として不老長寿の法が説かれ針灸の術が病気の予防治療として行われていた。病気の原因を陰陽の不調と考えてきた。天地萬物すべて陰陽の支配をうけ、天は陽、地は陰、五臓が陰で六腑が陽、上半身が陽で、下半身が陰、皮膚が陽で内臓は陰、そして陰陽の不調が病気の原因とされていた。中国黄河流域の北方民族では北は不毛の地が多く、針灸が発達した。西域や揚子江附近で発達した傷寒論は冥想的な内容が少く、西域はインドとの交通が開けインド医学が伝わり、南方の薬用動植物や礦物が入り、また導引という体操療法も発達していた。

わが国への東洋医療は外来文化の一部として始まった。414年朝鮮からの金武が允恭天皇の病気平癒につとめた。495年高麗の徳来が、そして562年百濟より呉の国出身の知聡が、薬方書164巻を携えて来日した。その中に神農本草経集注があり、牛乳の薬効も書かれていた。知聡の子善那が牛乳を孝徳天皇に献上した(645年)。これにより大和薬使主の姓と福常の名を賜った。595年高句麗から慧慈が来朝、聖徳太子に馬医術を伝え、これが太子流と云われ定着していた。607年小野妹子が遣隋使として派遣され、同時に医学留学生恵日と福因が同行し、針灸修行のため15年間滞在した。

 

西洋獣医療とわが国の関わり

1158年 イタリア、ボローニアに世界初の大学、ここで人体解剖が行われた。(初の人体解剖は紀元前300年、Herophilusは十二指腸、前立腺の名称を残す)
1543年 ポルトガル船が種子島に、この後南蛮医学を持ち込み、大友宗麟が西洋医療院をわが国ではじめて建てた。1600年オランダ船が臼杵沖で難破。ヤン・ヨーステン(彼の住居が後に八重洲と名づけられた)とウィリアム・アダムスは家康の外交顧問になる。
1603年 桑島流馬医橋本道派は加藤清正の家来が朝鮮より持ち帰った版木で、『仮名安驥集』をはじめての印刷馬医術書として翻訳をし出版した。
1725年 8代将軍吉宗はペルシャ馬を輸入、同行の調馬師ハンス・ユルゲン・ケイゼルがオランダ馬療治の本とオランダ本草の2著を献上、今村源右ェ門が5年かけて翻訳、国立公文書館に収納。実に解体新書の翻訳に先立つこと44年も以前のことである。
1762年 フランス、リヨンに世界初の獣医学校創立(現在は音楽院となっている)。
1853年 ペリー、品川沖に来航、1854年幕府は開港した函館では外人の求めがあれば牛肉の販売許可。
1862年 横浜根岸で外人居留民による競馬施行(同年生麦事件)。
1871年 日本に陸軍、海軍の創設。馬の改良と増殖が国是となる。
1873年 北海道開拓使黒田清隆が米大統領グラント将軍に牛(乳・肉用)とめん羊の導入を依頼、同行のエドウィン・ダンが来日後に札幌農学校真駒内農場で実地指導さらに後年米国公使となり活躍。
1874年 内藤新宿に大久保利通が農事修学場を計画、 ‘76年英人マック・ブライド獣医学教師着任(東京農工大の前身)。
1878年 駒場農学校創立、1月24日明治天皇行幸し勅語を賜わる。(現東大農学部)
1880年 独元軍人ヤンソン教師(獣医学)着任。
1881年 私立獣医学校小石川護国寺に開校(現日獣大)。
1885年 太政官布告により獣医師法制定。
1992年 獣医師法の改正により始めてその目的が定められ獣医療法も制定された。
1976年 東大附属牧場で木全春生(日大教授)臼井和哉(東大教授)及び桐沢獣医師が米国の馬の獣医師10数名と牛・馬の針灸医療の日米合同の研修会を開催、これを中心に獣医針灸研究会が発足した。

 

獣医東洋医学研究会の創立(現・獣医東洋医学会)

1987年4月20日 当時日獣大・本好茂一は東京都開業の川瀬 清氏の紹介でツムラ本社にて津村重舎会長に会う。川瀬氏はヨット仲間として親交があり、公私に亘る漢方の獣医療について語る。その後米国ツムラでドッグフードへの漢方添加の構想なども試みられ、一方人のエイズの体質改善研究協力なども試行された。これに先立って1983年、第22回世界獣医大会がオーストラリアパース市で行われたが、このときマードック獣医科大学で中国の馬の経絡を示す一幅の掛軸に目が止まった。既に獣医学教育に針灸の実習が行われていたのである。現会長の長谷川篤彦教授らと計らい日本でも東洋獣医学研究会の創設を進める気運が高まって来た。
1993年 ツムラおよび津村重舎会長の支援で長谷川君の父の親友でもある慶応大学医学部名誉教授細谷英吉博士をお招きし日本獣医師会の三学会京都大会の前日、2月5日京阪ホテルにて有志数十名と「漢方医療を中心とし獣医療にまで及ぶ」素晴らしい講演会を開催した。
10月31日 獣医東洋医学研究会の創立総会を、東京都市センターホールで開催した。
1994年2月10日 日本獣医師会三学会に併せて第2回獣医東洋医学研究会を松江市「くにびきメッセ」のコケラ落としに併せて開催した。

ここ島根市こそわが国獣医療発祥の地でもある。西暦200年農耕の神として遍く知られる大国主命が病気の治療や鳥獣、昆虫の災を防ぐため、そして豊作を願い呪術が初めて行われた地である。ここでは因幡の白兎があざむいてワニザメに皮を剥がされガマの穂によって救ったというわが国獣医療がはじめて行われた地である。

この東洋医学が朝鮮半島経由でわが国に齎らされたことは容易に首肯されるこの地方で山口にはじまる高病原性鳥インフルエンザの発生が猛威を振るっている時、獣医東洋医学創立までの道のりに関わる記事を書きながら深い思いというより或種の感慨に耽っている。

 

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