|
清元【お夏】(抜粋)
ゆく秋の
向ひ通(とおる)は清十郎ぢゃないか
笠がよう似た菅笠(すげがさ)が 合
笠よ笠 梅の花笠その花笠を
縫いやわづろう藪鴬(やぶ・うぐいす)の
ほけきょほけきょと身を逆さまに
泣いて殿御に逢るるならば
七日七夜も泣きあかそもの
我はこの夜におくれてひとり
染(そ)むる間もなき 合
晩紅葉(おそもみじ) 風に散りそろ紅葉が風に
ひらりひらひら 合
散る紅葉
葉を染めて小袖(こそで)の晴れもよう
「何 いつもの唄を おぉ 歌おうとも 歌おうとも」
わしとなお母と糸とていたれば 東窓から文の投げる 合
わしにゃあたらで おかさに当たる 合
おかさわしょみる わしゃおかさみる
取るにゃ取られぬ水の月 しょんがえ
「何じゃ お夏の歌ジャ・・ハー」
清十郎ころさばお夏もころせ
生きておもひをさしょよりも おもひを生きて
生きておもひをさしょよりも
「清十郎・・清十郎・・清十郎」
次第に迫るうばたまの 合
無明を破る鐘の声 はしなく流れ近江路や
一樹の下のゆきあひも他生の縁や菩提の縁
実に大慈悲の御佛の
堅き誓ひぞ 頼もしき
|
|
補足
西鶴版「お夏清十郎」とは…。
当代きっての色男だった酒屋の跡取り息子・清十郎は遊び人で、とうとう勘当(かんどう)されました。勘当とは江戸時代の制度で、届けられると相続できなくなるばかりでなく、持ち物もなく家から追い出されます。行く当てなく姫路城下の商家に奉公し、ここで主人・但馬屋九右衛門の妹・お夏と恋に落ちますが、勘当の身分では、身分に差がありすぎ結ばれない時代でした。でも運命に逆らい、手に手を取って駆け落ちしたものの、追っ手に捕らえられ連れ戻されてしまいます。清十郎は七百両の盗みの疑いまで掛けられ、処刑されました。ところがそれは濡れ衣で、お夏は清十郎恋しさのあまり気が狂いました。
この舞踊は気がふれたあとのお夏を描いています。
秋。放浪をし近江路(滋賀県)を訪れます。菅笠をかぶった人を見るとその人が清十郎に見えてしまい、つい追います。
ふと心は清十郎との温かい思い出に。
「お母さんと糸を紡いでいたら、東の窓から清十郎さんからの手紙が投げ込まれた。それはお母さんに当たって、なにこれ、と私を見ます。でも私は気まずくてとぼけてました。その手紙は水に映る月と同じ。手に取れない。」
村の子供にはお夏の唄を歌えとはやされ泣き崩れる。
「清十郎を殺すなら私も殺せ、いきているよりも・・・」
蛇足
お夏は当時16歳。その時代では女性の初婚年齢は14〜20歳。二十歳を超えたら年増(としま)といえます。
 |