■ 箸は属人器
たいていのご家庭では、お父さんのお茶碗、お母さんのお茶碗というふうに、ご飯茶碗は使う人が決まっているのではないでしょうか。ご飯茶碗のように使う人が決まっている食器を属人器といいます。属人器は日本固有の食文化だといわれています。
お箸も属人器です。割り箸が普及したのも、割る前の箸はまだ誰も使ったことがないことがはっきりしているので、この箸は自分専用だという安心感があるからでしょう。
最近はマイ箸をお使いになるかたも多いようです。これも箸は自分専用であってほしいという気持ちの現れなのだと思います。
■ わりばしの初め
江戸のうなぎ屋さんが使い始めた引裂箸という竹製の割り箸が始まりだといわれています。いつごろからあったのかは、くわしいことはわかりません。たぶん、うなぎが流行していたという18世紀の終わり頃か19世紀の始め頃でしょう。
■ 陽炎やそば屋が前の箸の山
小林一茶の俳句です。一茶の時代、まだ割り箸はそば屋で使われていませんでした。
お客が使い終わった箸は、洗って店の前で干して使い回ししていました。
それにしても山のように大量の箸を干していたというのですから。よっぽど繁盛しているそば屋だったのでしょう。
■ 落語 時そばの割り箸
落語の時そばには、割り箸ををほめる場面があります。時そばでは、そば代が16文ということになっていますので、江戸時代のおはなしということになります。
しかし、そば屋が割り箸を使い始めたのは、明治以降のようです。では時そばに出てくる割り箸はどうなんだ?ということになりますが、実は『時そば』というお噺は、明治時代に三代目柳家小さんが作った話なのです。
明治時代といえば、割り箸がぼちぼち普及し始めたころなので、『時そば』のように割り箸を使うそば屋と、使い回しの箸を使うそば屋が混在していたものと思われます。
■ サバを読む箸の寸法
割り箸の長さは寸(すん)単位で表示されることがよくあります。寸(すん)というのは昔の長さの単位です。1寸は約3センチです。
ふしぎなことに割り箸の実際の寸法は、表示されている寸法より1寸(いっすん)短いのです。
たとえば、9寸箸と表示されている割り箸は、9×3=27で27センチなければならないはずです。でも実際に測ってみると、24センチしかありません。
実際の長さより1寸長くいうのは、割り箸屋さんの昔からの習慣らしいのです。どうしてそんな習慣ができたのかは謎です。

■ 割り箸の種類
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| 小判箸 元禄箸 天削箸 利休箸 |
■ 割り箸の種類 元禄箸
飲食店でもコンビニ弁当でも普通に使われている最も一般的な割り箸です。まんなかに溝が彫ってあるのが特徴です。
この溝はきれいに割れるようにするためだと言う人もいますが、これは間違い。割り箸は木の繊維に沿って割れるので、溝があろうと無かろうと箸の割れ方に全く関係ありません。
この溝は使うときに口当たりがいいように、箸の角をとるためのものです。
溝を彫っていないものは小判箸といいます。
■ 割り箸の種類 天削箸
お膳の上に置いたときに格好が良いように、頭の部分が斜めに削っています。ですから、お膳に箸を置いてお客に供するような割烹的な店でよく使われます。箸立てに箸の束をドカッと置くような店ではまず使いません。
■ 割り箸の種類 利休箸
割り箸としてはいちばん高級で、料亭的なお店で使われることが多い箸です。利休箸という名前から安土桃山時代からあるかのようですが、割り箸としては明治時代にできた割り箸です。千利休が茶会のために作った箸のかたちをまねて作ったものともいわれています。
特徴は箸先も頭も同じように細くなっていることです。おめでたい時に使う両口箸というタイプになります。両口箸が箸先も頭も同じかたちになっているのは、箸先は人が使い、頭のほうは神様が使うためといわれています。
■ 割り箸の材質
元禄箸には、白樺やポプラが使われます。白樺は値段が安いのですが、油が酸化したようなにおいがあったり、使っているうちに湿気を吸って曲がったりするものが多かったようです。そのためか、最近はポプラ材がよく使われるようです。白樺もポプラもほとんど中国産です。
天削箸や利休箸は杉や檜や松が使われます。こちらは主に国産の材木を製材するときに出てくる切れ端で作られます。
とかくエコでないと非難されることの多い割り箸ですが、製材で出る切れ端の有効利用だと考えると、そう悪者扱いすべきものでもないような気がします。
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