『桑田真澄ピッチャーズバイブル』

おすすめ度:★★★☆☆

ジャンル:スポーツジャーナリストのノンフィクション

発行所:集英社

著 者:石田雄太

発 行:1998年4月

備 考:

 

今週の週刊ベースボール(10月3日号)に、2年目の西村健太郎(広陵−巨人)のインタビューが載ってい

て、目標とする投手という問いかけに、桑田を上げていた。

若手が台頭してきた巨人投手陣の中で、来年の飛躍が期待される西村は、1985年生まれの20歳。

投げる・打つ・守る全てが出来ることを、その理由にあげられた桑田は、プロ20年目。

幅広い年齢層の選手・ファンに与えている影響ははかりしれない。

 

この本は1998年の開幕前に発行された。

もう7年以上前の出版なので、桑田が今おかれている状況とは全く違う。

出版当時は30歳だった桑田も、2005年の3月、桑田は37歳になった。

歳月は流れても、桑田の野球に対する取り組み、姿勢は変わっていないハズだ。

桑田の存在自体が若手選手への、野球界への刺激となる。

 

95年、当たり前のようにローテーションで投げ続けたエースが、突然野球を奪われた。

ヒジのケガである。

渡米して手術、96年の登板はゼロ。

許可が出た96年10月にピッチング再会したものの、痛みは消えず、思うようなボールが投げられない。

この時まで、桑田はプロ入りしてからの11年間、ノートに日記をつけていた。

『投手として自分の試みや思いを全て綴ってきた大切な日記』であり、『投手としての夢を綴ってきた。食べ

たもの、練習メニュー、その日に感じた思い。桑田真澄の11年間の足跡』というプレミアものの日記を、桑田

は一冊づつ破り捨てた。

投げられないのなら、こんなもの役に立たないんだ!

先の見えないなかでのリハビリ、襲ってくる不安とあせり。

桑田ほどの男でも自暴自棄になるくらいつらいものだった。

それでも桑田は自分を信じ、自分のボールを、そして自分自身を取り戻した。

それは、多くの仲間のおかげでもあったのだ。

 

ケガからよみがえるまでの桑田の野球人生と、野球観などが書かれてある。

桑田の努力のすべては野球のため、といってもいいだろう。

投手としてだけではなく、打者としても走者としても全力プレー。

これを「投手なんだから投球に専念するべきだ」と批判する解説者もいるが、そういう解説者は「していな

い」人だからこそ簡単に責められるのだろう。

桑田は、選手としての役割をまっとうするための準備を、「している」のだ。

食事、トレーニング、肉体作りは全て野球のため。

妥協はなかった。

体が小さいことをコンプレックスにしながらも、野球に真摯に取り組み続けた桑田の姿は、プロフェッショナ

ルを感じさせてくれる。

プレーヤーとしてもだが、ファンへの対応も含めて人間として見習うことがたくさんある。

 

「桑田は終わった」という、いつもの声なんか聞く必要はない。

終わったというのは、これから成長をすることを辞めた人間のことを言うのだから。

復活の1997年、開幕2連敗後の3試合目に先発している。これについて、桑田はこう答えている。

『連敗して迎えた試合でしたけど、やっぱり僕は逆境が好きですからね。僕の人生はいつも逆境からのスタ

ートだし、その方が燃えるじゃないですか』

17歳の少年のころからマスコミやファンに叩かれ、悪玉扱いされた桑田のこの言葉は、重い。

 

桑田は2004年暮れ、契約問題というよりも去就問題でいろんな記事が飛び交った。

清原とともに巨人を去り楽天に行くのではという憶測があったが、結局2005年は巨人の選手として頑張っ

。しかし、与えられたチャンスに勝利という結果がついてこないまま、桑田の今シーズンは終わった。

桑田の来シーズンはどうなるかはわからないが、卓越した野球センスは必ずどこにいても生きる。

巨人はこの財産を手放すべきではないと思うが、現役として活躍の場があるかぎりはどこへ行っても応援し

たい選手である。

 

先にはよき指導者として・・・、いや、まだまだ選手をまっとうしてから。

目指せ200勝。そしてそれは通過点。

ホームへ  野球の本リストへ