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last update 2001.05.25
チタン

軽く強く変わらぬ姿の、人に優しい金属

元素記号 原子番号 原子量 密度 [g/cm3] 融点 [℃] 沸点 [℃] 結晶構造(20℃)
Ti 22 47.88 4.50 1660 3290 HCP

■軽く、硬く、溶けにくく、錆びにくい金属

テレビCMで、「チタンヘッドを採用したゴルフクラブ」なんてフレーズを 聞いたことはないでしょうか? あれは、チタン(Ti)の合金を ゴルフクラブの先端部の材料に使ったものです。

チタンは、軽い金属です。同じ体積の鉄やアルミニウムと重さを比べると (つまり、密度を比べると)、チタンは鉄の約0.6倍、アルミニウムの約1.7倍。 ところが、その硬さはアルミニウムの約6倍。そして、チタンは1660℃の 高温まで溶けません(この温度では、鉄なら溶けてしまいます)。また、 チタンは非常に錆びにくい金属です。常温では、金属が錆びやすい 水の中でさえも錆びません。このように、チタンは軽くて硬く、 過酷な環境に耐える性質を持つため、飛行機やロケットを作るのに 欠かせない材料となっています。

■作るのが大変なチタン

軽くて硬くて錆びなくて・・・と、良いことずくめのように 聞こえるチタンですが、実はそうでもありません。性能は確かに 素晴らしいのですが、問題は、作るのが大変だと言うことです。

チタンは、天然には純粋なものは存在せず、ルチルと呼ばれる鉱石や イルメナイトと呼ばれる鉱石の中に、二酸化チタン(TiO2)として 産出します。この二酸化チタンから純粋なチタン(Ti)を取り出すのですが、 それが結構大変なのです。

チタン スポンジチタン二酸化チタンのチタン原子は、酸素原子と非常に強く結びついているため、 すぐには離れてくれません。だから、いったん二酸化チタンから四塩化チタン (TiCl4)という物質を作り、その四塩化チタンから塩素(Cl) 原子を取り除いて純粋なチタンを作ります。このとき出来るのが、 スポンジチタン(写真左)と呼ばれる穴ぼこだらけのチタンで、これを 溶かして、いわゆる金属らしいチタン(写真右)ができます (ちなみに、この写真のチタンは私が実際に使っているものです♪)。 この工程では、凄い量の電気を消費します。だから、チタンを作るのには お金がかかるのです。

また、チタンやチタン合金は硬いため、切ったり削ったりの加工に 時間がかかって大変です。私も実験でチタンの合金を作っていましたが、 厚さ1cmほどの合金を1cm切り進めるのに、1時間かけたりしてました。(苦笑)  また、せっかく苦労して二酸化チタンからチタンを取り出しても、 この切削によりチタンくずができ、製品に使えるのは最初の何割・・・ なんてことを考えると、ますます費用がかさみます。

そこで、最近では「焼結(しょうけつ)」という加工法も採用されています。 これは、原料を非常に粒の細かい粉末にし、型に入れて焼き固める方法です。 つまり型抜きですね。この方法だと、チタン合金のように切削の難しい 硬い金属でも、複雑な形の部品を大量に作ることができます。また、 粉の状態で成分を調整することができるので、普通では作れない合金の 部品も作れます。

とはいえ、実際のところまだまだ値段の高いチタン。しかし、 その素晴らしい性質のため、費用より性能が重視される場面では 重宝されています。それでは、次にチタンが活躍する分野について、 詳しく紹介していきます♪

■チタンヘッドのゴルフクラブ

冒頭でも少し触れた、ゴルフクラブのチタンヘッドには、 チタン合金が使われています。日本国内のチタンの需要としては、 ゴルフクラブが多くを占めているそうです。

チタン合金は軽くて強いため、同じ重さなら他の材料を使うより 大きい部品が作れます。このため、チタン合金なら、軽くてヘッド部分が 大きいゴルフクラブを作ることができます。ヘッド部分が大きいと、 思いきり振っても命中率が高まって、結果、飛距離も伸びるそうです。

■飛行機にロケットに

軽い、強い、溶けない、錆びない等の性質が一番求められるところ。 それが航空宇宙産業です。チタン合金は、飛行機のジェットエンジンや ロケットなどに広く利用されています。

最近でこそ身近に利用されるようになったチタンですが、 第二次大戦後にチタンが実用化されて以降、主な用途は航空機(特に軍事用) でした。今でも欧米では、チタンの需要は軍事・民間用の航空機材料が 多くを占めています。この辺、日本とエライ違いです。(笑)

■発電所のパイプ

火力・原子力発電所でも、チタンが大活躍です。火力・原子力発電所は、 熱による蒸気でタービンを回して発電を行っているのですが、このとき、 使用後の蒸気を冷却する必要があります。その冷却水としては、たいてい 海水を使います(だから発電所は海辺に建てられるんですね)。 ところが、この海水が金属の大敵なんです。

金属は、水のあるところで錆びやすく、塩水のあるところでは特に 錆びやすいのです(海岸沿いの町で車が錆びやすいのはこのためです)。 だから、発電所で海水の冷却水を通すためのパイプには、錆びない材料を 使わないといけません。そこで火力・原子力発電所では、錆びないチタンが 使われるのです。

■時計、眼鏡のフレーム、ピアス、そして人工骨

チタンは海水でも錆びないので、汗の塩水も平気です。 このため、私たちが身につけるものの多くにチタンが使われています。

汗で金属が錆びると、成分の金属元素が体内に入ってしまいます。 これが金属アレルギーの原因となります。ところが、チタンは 錆びないため体内に入っていきません。このため、チタンは 金属アレルギーを起こしません。高価なチタンですが、人体に害を与えない 金属として、時計や眼鏡のフレーム、ピアスなどに広く利用されているのです。

また、人体に害を与えないことに加え、チタンは硬く強いため、人工関節や 人工骨に利用されています。関節は動くとき絶えず摩擦されます。このとき、 人工関節がすぐにすり減るようでは困るので、硬くて消耗せず身体に害のない チタンは威力を発揮するのです。

■他にも・・・

ここまでに挙げた以外にも、海水でも錆びない性質を利用して、 海の上を渡す橋(海底からの柱の部分)、海底油田で使う機械などにチタンが 使われています。また、チタンは酸性雨にさらされても錆びないため、 建造物の屋根や壁の材料にも使われています。福岡ドームの屋根も チタン製だそうですよ。

■化粧品にも二酸化チタン

チタンの化合物の二酸化チタン(TiO2)は、すべての波長の 光を反射します。すべての波長の光が吸収されずに反射されるとき、ものは 白く見えます。このため、純粋な二酸化チタンは真っ白で、白色顔料に 使われています。また、チタンは人体に害を及ぼさないため、二酸化チタンは 化粧品にも使われています。光を反射する二酸化チタンで、肌を 守っているんですね。また二酸化チタンは、粒を適当な大きさや 形にすると紫外線を散乱させることができるため、紫外線予防にも 効果的なのです。

■体内でのチタンの実際

チタンは、地殻中では9番目に多い元素なのですが、生体内には極めて 少ない元素です。人体にも非常に少ないのですが、わずかに 存在はしていて、特定の金属元素と共存しているそうです。このため、 チタンはそれらの金属元素と何らかの相互作用をしているのだろうと 考えられていますが、これと言った人体への影響は 報告されていないようです。