入院...してみるもんじゃねぇな
目次
- はじめに
- うぉぉ,頭痛てぇ
- 救急病院というところ
- 再び救急病院へ
- 普通に診療を受けてみる
- 神経内科
- いよいよ腰椎穿刺!
- 入院検査
- 楽しい隣人
- ここがヘンだよ,外科治療
- 看護婦さんも色々やね
- 謎の新病?
- 後日談
- はじめに
2000年7月に突然,髄膜炎に掛かりまして,10日ほど入院していました.物心ついてから入院したことなど初めてで,いろいろ貴重な体験が出来ました.今回はその時の体験記を公開してみます.同時に医療の問題点を垣間見た部分もあり,その点に付いても触れていきます.
- うぉぉ,頭痛てぇ
上海から日本へ帰ってきて2週間も経つとどうも頭が痛い.痛いだけでなく熱も出てきた.とりあえず風邪だろうとたかをくくり(高を括り)寝込んでみる.そうか,こういうときに限ってご飯を作ってくれる人はいないのでした.うぅ,悲しいが一人で耐えるしかない.とりあえず家にたまたま置いてある食料(お菓子やカップめん)を片端から食べてみる.うーん,頭痛いよぉ,熱っぽいよぉ,おなか空いたようぉ...こんな調子では治る病気も治らないのも無理あるまい.
そして,二日が過ぎた...熱も下がらなければ頭も痛い.自慢ではないが,風邪でも頭痛になったことなどめったに無い.それだけに頭痛が堪える.うーん,頭痛てぇ,頭痛てぇ,頭痛てぇ,頭痛てぇ,頭痛てぇよぉ.そんなことを言っている間に,なんかすごい高熱になってきたような気がする.ちょっと計ってみよう.うげっ,39度を越えている.熱には強い体質だったが,これだけの体温だとさすがに参ってくる.このままでは死ぬかもしれない...(ちなみにそう思ったのは実は今までの人生で二回目)明日は病院に行ってみるか?しかし,水曜日の夜...翌日の木曜日は休みの病院が多いんだよなぁ...それに,このままでは明日は動けなくなっているかもしれない.死んだまま2週間ほど誰も気付かず,悪臭で近所の人が発見などという失態は御免こうむる.しかし,たかが風邪で救急車を呼んだら近所の笑いものだ.こういうときでも自力で歩けてしまう丈夫さが恨めしい.時間は夜11時...うぅ,微妙だ.ともかく,電話帳にある「夜間・休日診療所」とかいう所の住所を調べ,車で行ってみることにする.
- 救急病院というところ
地図を見ると,車で約30分のところ.少々遠いが致し方ない.39度5分もあるのに,車を運転して出掛ける.頭は痛いし,熱でぼぉーっとしているし,こういう状態で車を運転していいかどうかはまるでわからないが,取り締まる法律も無いだろう.
「夜間・休日診療所」らしきところをようやく見つける.ん?駐車場がロックされている.救急車のためにロックしているのか?しかたなく,近くの路上に車を放置して近付いてみる.やってない...茫然.年末年始だけやっていて,なんで「夜間・休日診療所」やねん.ふざけすぎている.「年末年始診療所」と改称するべきだ.しかし,ここまで来て単に帰るのもあまりに虚しすぎる.
ん!そう言えば,ER(アメリカの救急医療ドラマ.リンク先はYahoo!)なんかでは救急科に自力で行っても見てもらえたぞ.とりあえず行ってみよう...どこに行こう(笑)
患者の心理として(勘でも)なるべく信頼できる病院に行きたい.ちなみに,私は病院選びではほとんど失敗したことがない(と思っている).だいたいその病院の良し悪しは,その経営母体(公立か私立かなど)やその「店構え(?)」や開業場所でだいたいのところはわかるのである.特に開業医に関しては,「ご立派な建物」の診療所は内科だろうが歯科医だろうがまず「外れ」である.ひっそりと,一般家屋のような造りで,気さくにニコニコ,患者(患者だって顧客だ)が聞く前に病状や薬の説明までしてくれる病院がだいたい「あたり」である.
少々話がそれてしまった.今回は救急受付のある総合病院で診てもらうために,今までの選択基準とはまるで違うのである.しかもその選択はずっと重要であり,慎重に選ばないといけない.選択肢は,市内で最も大きそうな国立大学病院,市内で一番大きそうな国立病院,自宅に一番近い私立救急病院の三つ.国立大学病院・・・人体実験(←偏見)されそう.私立病院・・・診療費が高そう(←偏見)ということで,国立病院に決定.とてつもなく偏見に満ちているが,自分の命には替えられない.
とりあえず「市内で最も大きそうな国立病院」に行ってみる...駐車場はやはり閉まっている.ここも休業だろうか?とりあえず,救急車入り口の方に歩いて行ってみる...「時間外受付窓口」,ここだ.かろうじて電灯も点っている.どうもER(リンク先はYahoo!)で見た救急受付とは違うなぁ....(当たり前である)
薄暗い入り口を開けて奥に入ると,「時間外受付窓口」というところがある.そこに健康保険証を出して受付を済ませる.受付の人と楽しく談笑...本当は死ぬほど頭が痛いのに.こんなときに「いい人」ぶってしまう自分が悲しい.この病院では夜間受付の診療費は「後日精算」と言うことになるらしい.面倒だが,背に腹は替えられないのである.
15分ほど待っている間に救急車のサイレンが聞こえてくる.こうなるとがぜん「救急病院」という気がしてくる.そんなこんなで待っていると,先生のご登場である.まるで小泉首相のような「白髪混じりのライオンヘアー」...その風貌は小泉首相を横に25%(当社独自の比較)ほど拡大したようでもある.実に温厚な先生であり,感じはよかった.一通りの内科一般検診を終え,出た言葉が
「髄膜炎かもしれませんな」
「え?髄膜炎ですか?」
「髄膜炎かどうかは『腰椎穿刺』してみんことにはなぁ....」
「腰椎穿刺」と言えば,あの「背骨に注射する」腰椎穿刺ですか?「めちゃくちゃ痛い」注射じゃないですか?ドラマで見たときは3人くらいの看護士(決して看護婦ではない)で押さえつけて注射する(←偏見),あの腰椎穿刺ですか?困る,困る,困る,それは困るぞぉ.
「あ,あの...どうしても腰椎穿刺...しないといけないんですか?(おそるおそる)」
「今日やるというわけじゃないですよ.今日はお車でしょう?」
「はい」
「腰椎穿刺したら....」
「入院ですか?」
「いや,いや.ただすぐに動いてはいけないので,半日くらいは安静状態で病院にいてもらうことになります.もちろん,自分で運転して帰ってもらうのは困ります」
「そ,それは今されたら困りますね(ほっとする)」
「とりあえず2,3日様子見て,それでも熱が下がらなかったら『やります』」
いや,そんなに力いっぱい断言されても非常に困るのであるが,この日はとにかく薬をもらって帰ることにした.
帰り際に先ほどの救急車で来たらしい患者が搬送されてくる.担架で運ばれるところを見ると私よりよほど重症のようだ.自力で来られる私のような者が先に診てもらって大変申し訳ない.患者の友人一名が付き添い.患者は嘔吐物にまみれている...ん?これは,ひょっとして,なんと「急性アルコール中毒」ってやつですか?謝罪撤回!人様に迷惑かけるまで酒飲むな.人のことは言えんが(笑)
- 再び救急病院へ
解熱剤をもらい,服用してみる.熱は下がらない....どうしても熱が下がらない時のために,座薬をもらっていたのだった.この座薬効くなぁ....いや,別の意味でクセになってはいかんな.しかし,薬とはいっても単なる解熱剤なので,病気が治るというわけではない.2日も過ぎると薬が切れ(←多大な誤解を招く表現),やはり頭痛で動けない状況になってくる.
しかたないので,同じ病院の救急窓口へ再度出かける.また座薬でももらって家で静養していればいいやと思っていたのだが....
今日の診察は先日と違う女性の先生.自慢じゃないが,医者を見極める目は持っているつもりである.この先生は...大きく外れだった.まず,「患者の訴え」を聞こうとしやしない.こういう医者は間違いなく「大はずれ」である.検査結果の評価などならともかく,自覚症状は患者が一番よくわかっているのである.これを聞く姿勢のない医者はまず「はずれ」と思って間違いない.さらに患者に苦痛を与える治療方針も平気なのである.これが初診なら,受診を切り上げて途中でも帰っているところだ.
ともかく,一週間も高熱が続くという事態はただの風邪とも思われず,翌日に通常の診療を受けることになった.この日もまた薬だけもらって帰宅する.
- 普通に診療を受けてみる
こういった総合病院はどうも苦手だ.そもそも午前中に受付が終わってしまうのがどうも納得がいかない.こっちは疲労しきった病人である.早起きしてなおかつ何時間も待たされたらかえって病状が悪くなる.
看護婦さんに「熱測ってください」と言われ,体温計を渡される.測ってみると39.5度もある.どうりで頭がぼぉーっとするわけだ.診察を待たされているうちに12時を回ってくる.今日はもう診療を受けられないのか?と思っていたら最初の診療をしていただいた先生が通りがかる.
「あ,何してんの?」
「診察待っているんですけど」と高熱でぼぉーっとした頭で答える
「はよせんと午前中の診察が終わってまうで」
「はあ,そりゃそうなんですが」
「診てあげるからこっちおいで」
診察の順番とかどうなっているのかわからないが,先に診察を受けられるらしい.
普通の内科検診を受けた後,院内紹介書を渡されて「こりゃあ,髄膜炎かもしれんな.神経内科へ行ってください」と言われた.「神経内科」って何?心療内科とか精神科とは違うよなぁ....まあ,とにかく行ってみるほかあるまい.
- 神経内科
神経内科というところはどうも「脳・神経にかかわる内科疾患全般」を取り扱うらしい.より詳しく知りたい方は慶應義塾大学病院 神経内科のホームページをご覧ください.難儀なところに回されちまったもんだ.
「首は痛くないですか?こうやって自由に回せます?」
「痛くないですね.首を回すのは何ともないですし」
後で知ったのだが,成人の無菌性髄膜炎の場合,首が痛くて回せないことがあるらしい.
「髄膜炎だと思うんですけどねぇ...髄液を取らないことは何とも」
「あ,あの...それってどうやって取るんですか?(ひょっとして聞かない方がいいかも)」
「まあ,腰のこの辺にですね,注射を刺してちょちょいと...」
「(あああ,やっぱり聞かなきゃよかったぁ...)それって,『腰椎穿刺』ってやつですか?」
「ああ,まあ,そういうやつです」
「あ,あれはやっぱりやめときましょう」
「でもね,あれやらないと病名が確定出来ないんですよ.覚悟決めてやっときましょうよ」
「やっときましょう」って,そりゃ人の体だから....
「で,でも,あれって痛いんですよねぇ(おそるおそる)」
「まあ,個人差もありますけど,痛いという人もいますねぇ」
その「痛い」人やったらものすごくいや(笑)
「ここは覚悟を決めてやっと来ましょうよ,ね,男らしく」
男に生まれたことを後悔しても遅い,わし.
隣で笑いをこらえる看護婦さんを気にする余裕は残念ながら全くない.
かくして,腰椎穿刺をされてしまう事になるのでした....
ちなみに腰椎穿刺については腰椎穿刺のやり方を知っていますか?(犀潟国立病院池田先生のホームページ)をご覧ください.受けなくてはならないときに,少しは安心して受けられます.
- いよいよ腰椎穿刺!
いよいよ年貢の納め時...じゃなかった,初ルンバール(lumber:腰椎穿刺)である.
「それではひざを抱えて,左を下にして横になってくださ〜い」
この先生,なんだかちょっと嬉しそうなんだけど.
「へそのあたりを見てくださいね.そして針を刺すときは息を吐きながら...」
背骨の数(たぶん刺す位置が決まっている)を数えて,いきなり針を刺そうとする先生....
「あ,あのぉ,針を刺す前に麻酔しないんですか?」
「麻酔しようと思ったら一回針刺さないといけないでしょ?」
「ん,まあ,そりゃそうですね」
「麻酔する時に針刺しても痛いんだから,同じ事だと思いません?」
「まあ,確かにおっしゃるとおりですね」
「ということで,私は『腰椎穿刺には麻酔しない主義』です」
「は,はあ」
いいのか,それってそのとおりなのか?何か騙されたような気分になりつつ,すでにベッドの上でひざを抱えた状態で横に寝かされている.
「あ,あのぉ,テレビで見た腰椎穿刺とかは3人がかりの看護『士』が押さえつけているみたいなんですけど」
「5歳くらいの男の子でもそんなことしなくてもいいくらいですから,大丈夫ですよ.もし『どうしても』とおっしゃるなら押さえつけてもいいですけど?」
「や,やっぱり遠慮しておきます」
「じゃ,いきますよ〜.絶対に動かないでくださいねっ」
その「絶対に」を強調されるのがたまらなくいや.というか,もし動いたらどうなるんだ,わし?好奇心はあるが聞いて怖い答えだったら嫌なので,そのまま黙っていた.うう,緊張するぅ〜.女の人の「初めて」というのもこんな感じなんだろうか?などとわけのわからんことを考えつつ身をこわばらせる.
ぷすり
あれ...?
全然痛くないや.
針の刺さる瞬間こそチクリと痛むものの,それからは「ぜんぜん」痛くない.つーか,あのドラマのすごい演出はなんだったんだ?こんなに痛くない注射は初めてだ.髄液を試験管に入れて,ようやく一本目が終わる.
「そのまま動かないでくださいね〜」
まだ取るの?
「気分が悪くなったらすぐに言ってくださいね」
「大丈夫です」(と言うか,あまりにもあっけなさすぎ)
「じゃ,もうちょっと動かないでくださいね〜」
この医者,調子に乗って何本取る気やねん(怒)
結局,3本分髄液を抜き取られました.髄液は延髄や脳室内の液ともつながっているので,髄液をたくさん取った後に起き上がると脳室内の圧力が下がって頭痛(またはもっと重篤な症状)を引き起こすことがあるらしい.2時間の絶対安静を言い渡されて,腰椎穿刺はようやく終わった.頭痛のなどの症状は幸いに全く表れず,「あんなん楽勝やね」...最初の心配はなんだったんだ?
- 入院検査
「検査結果出ました」
「どうでしたか?」
「すぐ,入院です」
がーん
「髄液中の白血球数が4000もありますから,たぶん髄膜炎です」
「どういう治療になるんですか?」
「症状からして無菌性(ウィルス性)の髄膜炎だと思いますので...ヘルペスって知ってます?」
「水疱瘡の原因ウィルスの?」
「まあ,そんなもんです.ウィルス性の髄膜炎は原因ウィルスを特定するのがほとんど無理なのですが,ヘルペスにだけ効くゾビラックスという薬がありますので,これを8時間おきに点滴します」
「8時間おきって言うと...」
「夜3時,昼11時,夕方7時の3回です(きっぱり)」
(そんなペースで点滴されたら,健康な人も体調を崩しそう...)
「ともかく,入院の前に検査が必要ですので,この紙の指示に従ってください」
じたばたしてもしかたあるまい.腹を決めて入院前検診でも受けますか.
まずは尿検査...さして面白いこともなかった(当たり前か)
続いて血液検査...ここで事件は起こった.
「○○さーん」
...
「○○さーん」
......
「○○さん!」
.........
「○○さん,聞こえないんですか?」
その人は私に話し掛けているのでした...でも名前違うよ(笑)
「わし...Morryなんですけど...」
「え?○○さんじゃないの?」
「違いますよ」
「そんなはず...あなた本当に56歳?」
そんなわけないだろ!(爆笑)
皆さんにはすでにお分かりだろう.危うく患者取り違えをされそうになったのである.これが,もし手術だったら...問答無用で麻酔をかけられ,必要もないところを切られているのである.おお,こわい.
「おかしいなぁ.どうして別の人の『シール』が貼ってあるうだろう」
こっちが聞きたいくらいです!
血液検査では当然注射針を刺さなければならない.この「注射」が絶妙にうまい人と,下手な人がいるんです.採血係は2人.1人はうまいのがわかっている.うまい人に当たってくれと祈るわし...
最悪...下手くそに当たりました(笑)
(神は...我々を...見放した......) from 映画 「八甲田山」
痛みをこらえ,一本二本と血を抜いていく.まあ,抜かれるのはどうでもいいんですけど,わざとやっているんじゃないかと思うくらい痛い.何本抜かれたかわからないころ,ようやく指定分の血液を採り終えたらしい.
「じゃ,これで次に...あ,ごめんなさい」
ちょっと嫌な予感,「なんでしょう?」
「もう一本必要です」
またもう一回注射しなおしかい!?
ここの血液検査は二度と受けたくないと思いつつ,検査室を後にする.それにしてもなんであんなに髄液や血液を採るのだろう?それは後に明らかになる....
- 楽しい隣人
婦長さんが現れて,病室に案内してくれるという.この病院,広すぎる...帰り道を忘れないように目印を確認しながら歩く.帰るときも誰かが案内してくれるだろうと思う人もいるかもしれないが,もし,どうしても入院生活に耐えられなくなったときのための「脱走路」を確保しておくことは患者の心得である(おひおひ)
入院する科が「神経内科」であるためか,1フロア分も患者はいない.入院フロアは神経内科と外科,婦人科,小児科の混合病棟であった.婦人科というと,バラ色の入院生活のようにカン違いする人もいるかもしれない.世の中そんなに甘くない.どこが悪いんだか全く不明な女性歴最低50年のお嬢様方ばかりなのだ.婦人科というより「老人科(女性)」と呼んだ方が相応しい.通された病室は二人部屋で,お隣はいない.
そのうちに夕食とやらが運ばれてくる.ひとくち口に運ぶ...熱でやられているせいか味はしないし,食欲もない.ほとんど手をつけずに下げてもらうことにする.しばらくすると最初の点滴の時間だ.そう言えば,最近点滴ミスでなくなった方がいたなぁ(この事故は4月で入院が7月)などと思い出し,おもわず,この病院も大丈夫かと思ってしまう.なにしろ,この病院では血液検査でいきなり取り違えられてます.(←まだ根に持っている)とにかく,点滴バッグに自分の名前が書いてあるかどうかだけは確認することにする...10倍量の薬が入っているかどうかまではわからんもんね.さらに夜中にも起こされて点滴...針が刺さったまま眠れんでしょ,普通.それに,点滴が落ちきるまで(約一時間),点滴ミスで眠っている間に永眠というのが怖くて眠れやしない...これが最低一週間続くのかと思うとちょっと憂鬱.
翌朝,やはり食事どころではない.2食くらい食べなくても何ともないから人間不思議だ...というか,これだけ食べてなくて医師は何の手も打たなくていいのか?(笑)昼頃になって,隣の病室がベッドメイキングされる.どうやらお隣さんが埋まるらしい.3時ごろになって,お隣さんが現れる.どうやら下肢静脈瘤(リンク先はYahoo! Japanのカテゴリ)の手術待ちの人らしい.戦前は蒸気機関車の機関士をされていたそうで,今でもゴルフ場で週に2日は働いているとのことだった.それにしても,見た目にはものすごく体が丈夫そうな人である.いったいどこが悪いのだろうか?
この紳士,仮にAさんとしておこう,Aさんはとにかく元気.ハーモニカのうまい人で,婦人科が近いこともあり,ご婦人方(笑)にも大人気.しょっちゅう病室を抜け出しては,他の病室に出張する.とにかく一日中出歩いている...本当に下肢静脈瘤なのかとも思える.手術は3日目とのこと.医療ミスの続く昨今,せめてミスなきようにと願う.なにしろ,この病院では血液検査でいきなり取り違えられてます(←まだまだ根に持っている)から...わし.
相変わらず8時間おきに点滴,高熱のためご飯が食べられない日々が続く....
- 入院とは耐えることと見つけたり
熱も下がり,ご飯をおいしく頂け...ま,まずい.病院食がまずいということは聞いていたが,これだけまずいと「虐待」クラスである.ご飯が食べられなかったのは,高熱だったためではなく単に「想像を絶するまずさ」のためであったのだ.昔,工場付属食堂の食事を「こんなん人間の飯やない.『エサ』レベルや」と言ってしまいましたが,作っていた人にごめんなさい.下には下がありました.というか,これを平気で食べている他の入院患者たちはすごい.仕方ないので,退院までの一週間は水とジュースだけで過ごすことにする...耐えられるのか?
相変わらずの8時間おき点滴...絶食のこともあり,いいかげん体が参ってくる.入院して病気を治しているんだか体力の限界に挑戦しているんだかだんだんわからなくなってきた.
入院4日目.隣のAさんの手術日だ.下肢の手術の場合,あの毛もごっそり剃られてしまう.虫垂炎(通称:盲腸炎)の手術で剃られてしまった経験のある人も多いだろう.ベッドの仕切りのカーテンが引かれ(まあ,見ようとは思わないが),剃毛が始まる.看護婦さんに半裸で毛を剃られてしまうという状況にAさん(推定80歳以上)は「うおっ,馬力上がってきた」...元気すぎます(苦笑)そんなAさんも手術室に運ばれていってしまい,しばしの一人部屋状態.あいかわらず食事はまずいし,点滴の間は眠れない.
入院4日目.隣のAさんの手術日だ.下肢の手術の場合,あの毛もごっそり剃られてしまう.虫垂炎(通称:盲腸炎)の手術で剃られてしまった経験のある人も多いだろう.ベッドの仕切りのカーテンが引かれ(まあ,見ようとは思わないが),剃毛が始まる.看護婦さんに半裸で毛を剃られてしまうという状況にAさん(推定80歳以上)は「うおっ,馬力上がってきた」...元気すぎます(苦笑)そんなAさんも手術室に運ばれていってしまい,しばしの一人部屋状態.あいかわらず食事はまずいし,点滴の間は眠れない...うぐっ,さすがに4日もご飯食べていないと胃液が上がってくる...とうとう嘔吐.ガスターを処方してもらう.H2ブロッカー系の薬で,胃液の分泌から抑えてしまう胃腸薬のリーサルウェポンだ.しかし,人によっては血液障害,精神神経症状,アレルギー様症状などの副作用が出る時もあるので,ご注意ください.
Aさんが手術室から戻ってきた.麻酔が効いているのか眠っている.
翌日,Aさんはどうも調子が出ないらしい.手術前から見て明らかに元気がない.病院食にもあまり手をつけていないようだ.さすがに70を超えた体に手術の負担は重いのか?私はこの日も病院食には手をつけず....
そのまた翌日,Aさんがとうとう嘔吐.「この病院食...まずい」...そうでしょうとも!ようやく結論が一致しました.そう,この病院の病院食はまさに「殺人的」まずさなのである.入院すればするほど体力が落ちる...え?違う?もう少し話をしてみると,どうも抗炎症剤のせいで胃がダメージを受けているらしい.「先生に相談されてみてはどうですか?」と言ってみる.ここであることに気付いた.
問:「そう言えば,外科の先生って回診してたか?」 → 答:「あれが回診だったのか?」
- 神経内科の先生の回診の場合:
「Morryさん,今日の調子はどうですか?」
先生は聴診器を当てながら聞く.
「病院食がまずいです」
「...まあ,それは我慢してもらうとして,体の調子はどうですか?」
「調子はいいですが,飯がまずいので体力落ちてます」
「...心音・呼吸音は大丈夫ですね.じゃ,お大事に」
- 外科の先生の回診の場合:
病室の入り口で「Aさん,お元気ですか?」
(ちなみに病室の入り口から遠い方がAさんのベッド)
Aさん,ベッドに寝転んだまま「ああ,大丈夫ですよ」
「じゃ,何かあったら看護婦さんに言ってください」
(...え?術後の状態は見ないの?)
そう言えば外科の先生は「一回も」手術後の患者を診ていなかった!いいのか?そういうのってありか?患者がどういう状況になっているかわからないし,わかろうともしていないし,化膿もしていないのにいつまでも多量の化膿止め薬を飲ませて結果として胃がダメージを受けていようが知ったことではないのである.実はこの先生,地元紙にもその術法が紹介されるほど有名な先生らしい...症例を増やしたいのはわかるが,患者の扱いは最悪.
術前後のAさんを見ていると,「手術を受けない方が良かった」のは歴然.下肢静脈瘤と診断されていたが,Aさんの術前は積極的に歩き回って元気そのものだった.しかし,術後はすっかり元気がなくなり,食事も食べられなくなった...医学って何のためにあるのか非常に考えさせられた一件であった.
- 看護婦さんも色々やね
何日も入院していると看護婦さんも色々なタイプがいるのがわかる.まずは長年やっていそうな手馴れた看護婦さん.点滴やってもらってもまず血管は外さないし,こっちも気楽である.次にいいのが「普通の」看護婦さん.良くも悪くもなく普通である.
あまり遭いたくないのが,「必要以上に」患者に優しい看護婦さん...実は下手だったりします.失敗を繰り返し患者に謝り慣れしているというか...一度,このタイプの看護婦さんに点滴された時に「あれ?点滴液がちっとも落ちてこないなぁ...」なんて思っているうちに点滴針刺したところが見る見るうちに紫色になってきました.結局「針が静脈を貫通していた」らしいです...そりゃ,腕は痛いし,点滴液も入らないはず.患者に優しい看護婦さんゆえに怒ることもできず...うぅ,これが作戦だったのか.
それ以上にご遠慮したいのが「雑な」看護婦さん.とにかくやることが雑.「ああ,いつか医療ミスされそうだ(根拠なし)」と思えてしまうような雑さ...点滴バッグの名前とベッドの名札の名前が合っているかどうかくらいは確かめてくれ,頼む.
- 謎の新病?
入院してはや一週間.微熱(37度台前半)はあるが,「自分の印象では」大体治ってきた.連日夜中に起こされて点滴を打たれ,あまりのまずさに食欲もわかない病院食を出されては治る病気も治らない.そろそろ「ある意味で」体力の限界である.それとなく,
「そろそろ退院できませんかねぇ?」
それとなく切り出してみる.
「まだダメですよ.熱だって下がってないじゃないですか.病気の『原因』だってわからないし」
いや,原因なんてこっちはどうだっていいんですけど...だいたい,俺的には原因は「上海の蚊」に最初から決まっているのである.で,治ったから退院させろってな具合である.
「このまま熱が下がらないとまた腰椎穿刺することになります」
いや,それはちょっとご遠慮いたしたく...しかし,ここで一つの疑問がわく.
「ところで原因というのはどうやって調べるんですか?」
「髄液中のウィルスを調べるわけなんですが,保険診療内で調べられるのはウィルスの場合は2種類までなんですよ」
「そうすると『たまたま』勘が当たらないとダメじゃないですか」
「そうなんです.それにゾビラックス(今回の点滴薬)はヘルペスの検査にかかるので,投薬中はヘルペスの調査はできませんから...退院後,一週間でまた腰椎穿刺に来てもらうことになります...でも,患者さんは『治ればいい』ので,たいていは来てくれないんですよねぇ.結局,原因は『わからないことが多い』んです」
じゃ,原因を調べようとしなきゃいいじゃん....
そしてさらに3日後....
そろそろ体力も気力も限界である...病気で弱っているのなら入院に意味があるが,どう考えてもこの入院生活が原因で弱ってきている.この入院にはもはや何の意味もない.「今日あたり,脱獄(←日本語が間違ってます)しかないな」というようなことを企んでいるうちに,先生が回診にやってくる.
「どーーーーしても退院できません?」
「でもね,原因がわからないんですよ」
いや,だからその「原因」というのはもうどうでもいいんで,退院させて欲しいんですけど.
「とにかく,原因がわかるまでは退院させられません!(きっぱり)」
い,いや,そうきっぱり言われても....
お見舞いに来ている相棒に「まだ退院できそうにない」ことを告げる.
「このまま入院していると寝不足と飢餓で死ぬかもしれない...」なんて言ってみる(←半分本気)
するとお隣のAさんが池○○作先生の本(!)を出してくる.
「病気に負けたらいかん」
お,お気持ちだけ受け取っておきます...本の方はご勘弁ください(苦笑)
宗教って人が弱っているときに入り込んでくるんやね.
再び先生が病室へ,あれ?回診は終わったはずでは?
「やっぱり熱が下がらないみたいなんでね.もう一回腰椎穿刺します」
がーん
「で,でも病気は『もう』治ってますから」
「患者さんで判断されても困るんでね.ともかく『原因を究明』しないと」
いや,だからその「原因」というのはもういいんですって.原因が不明でも治ればいいんです(きっぱり)
でも,またまた腰椎穿刺されてしまうのでした.いや,だから,そんなに髄液抜くのやめてください...あれ,腰椎穿刺終わったのに,先生はどうして別の注射持ってんの?
「『結核』の疑いもあるので」
あ痛たたたた.ツベルクリン注射って結構痛いな.
「どうして熱が下がらないのかなぁ...解熱剤飲んでまだ微熱があるってのは....」
「飲んでませんよ」
「え?」
「だ・か・ら,飲んでませんよ.ほら,ここに頂いた薬は『熱が出たときのために,ちゃ〜んと』とってあるんですから」
「ああ〜,そうだったのかぁ」
先生は頭を抱えてのけぞり,そして座り込む.
「どうりで熱が下がらなかったわけだ」
そうです!ようやくわかっていただけましたか?
(放心状態で)「もう,いつ退院してもいいです....」
「じゃ,明日ってことで(大喜び)」
(放心状態で)「明日ね....」
やったー
あれ?看護婦さん,まだ点滴するの?
「一応,決まっていますので」
「しょうがないなぁ.ところで,薬飲まない患者さんっているんですか?」
「痴呆症の人は『飲み忘れる』ってことはありますけど,自発的に飲まないというのは『かなーり』珍しいと思いますよ」
がーん,そうだったのか.みなさん,医師の判断を迷わせますので,出された薬はちゃんと飲みましょう...特に入院中は(←当たり前だって)
まずは腹ごしらえだな.
相棒と一緒に病院内の食堂に食べにいくことにする.注文はピラフ.10日ぶりの人間らしい食事だ.
しかし,半分ほど食べたところで体に異変が.い,いかん,頭が痛くなってきた.そういえば,「腰椎穿刺の後は2時間絶対安静」じゃなかったっけ.退院できる喜びのために忘れていたよ.横になると楽になる...これは間違いなく抜かれた髄液のために脳圧が下がっているからだ.急いで,病室に戻って横にならなければ....その後も1週間は断続的な頭痛のために寝たり起きたりの生活を送ることになったのでした.
入院の教訓
- 出された薬はちゃんと飲もう
- 髄液抜いた後の半日は,できるだけおとなしくしていよう
- 病院食がまずくて食べられない時は,病院を抜け出してでも食べられるものを食べよう
いや,これはあたりまえですね(笑)
と,なんだかんだで無事退院となりました.そして,このエッセイもずいぶん時間を掛けましたが,やっと終わりました.「いつ終わるんや」なんて思っていた皆さん,筆者も同じです(笑)
...え?まだ終わってないの?
- 後日談
髄液抜いた後は本当に無理したらダメですね.退院後も一週間は断続的な頭痛で寝たり起きたりでした.頭が痛くてのびのびになっていた「退院後」検診.自分のカルテの最後のページには,「まさか患者が薬を飲んでいないとは思わず,治療が長引いてしまった.今後の教訓にしたい」...どうも申し訳ありませんでした,先生....(終わり)
エッセイ 目次
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