その時何が起こっていたのか?私はこう考える
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2000年シドニーピリンピック柔道男子100Kg超級の決勝戦は日本の篠原信一とフランスのDavid Douilletの間で争われることとなりました.試合開始後約1分30秒,ドゥイエが篠原に内股を掛けます.篠原はその内股をかわし逆に内股すかしを掛け,ドゥイエを仰向けに倒しました.しかし,審判の判定はドゥイエの有効.この不可解な判定に日本中で怒りの声が巻き上がり,糾弾サイトが次々に出来ました.しかし,このときに何が起こっていたのかを詳細に検討したサイトは「幻の一本」篠原選手対ドイエ選手の試合を検証する以外に私は知りません.ここではWeb管理人が公開されている情報や写真などを元に,この問題のシーンの再現を試みています.この分析があの時の状況の理解を助けることを切望します.この分析についてご意見・質問のある方は,Web管理者まで連絡を頂ければ幸いです.mailアドレスと掲示板へのリンクはこのページの最後をご覧下さい.
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Fig. 1はドゥイエが内股を仕掛けている途中です.ドゥイエの右足は篠原の左足に接触し,払おうとしています.ドゥイエの右手が篠原の帯を握っていることにご注目ください.Fig. 2ではそれはもっと明らかです.私がビデオで見たところ,この内股を仕掛けるかなり以前からドゥイエは篠原の帯を握りつづけています.その時間は6秒以上でした.この行為に対して審判は「指導」を与えるべきでした.しかし,それは為されませんでした.この決勝戦におけるミスジャッジの一つです.
Fig. 3の時点でドゥイエの右足と篠原の左足は完全に離れて空中にあります.篠原もドゥイエも一本足で畳に踏ん張っています.二人共に倒れてはいません.これは篠原がドゥイエの内股をかわしているためです.このまま同時に倒れれば同体となり,両者共にポイントを得られなかったでしょう.Fig. 4はさらにクリアーな写真です.ドゥイエの右手が篠原の帯を持って(反則です),彼を仰向けにしようと後ろに引っ張っています.しかし,篠原は彼の左足を高く上げてそれを無効化します.つまり,篠原は自らの回転慣性を増すことで,ドゥイエが篠原を投げることを困難にしました.これは篠原の素晴らしいボディバランスによるものです.
次の瞬間(Fig. 5),篠原の右手はドゥイエの左腕を引き,篠原の左手はドゥイエの体を押します.つまり,篠原はドゥイエの体を回転させる力を与えていました.内股すかしはこの時に仕掛けられました.ドゥイエはまだ帯を握り続け(反則です),篠原を後ろと下に引っ張っています.しかし,篠原は左足を後方にすばやく折り畳んでこれを無効化します.つまり,篠原は左足を後方に動かすことによって,抜群のボディバランスを保ちました.
Fig. 6はさらに少し後の写真です.ドゥイエの右手はもはや帯を握っていませんし,ドゥイエの体は完全に中に浮いています.ドゥイエが篠原の帯を持って(反則です)仰向けにしようとしていたにも関わらず,篠原はこの時点でその篠原の右足はまだ畳で踏ん張っています.篠原は彼の左足を有効に使ってバランスを取りました.Fig. 6で篠原の右腕は折り畳まれ,ドゥイエの左腕は伸びきっています.これは篠原の右手がドゥイエの左腕を引いていた証拠です.篠原は既にドゥイエの体を90度以上回転させていて,ドゥイエの顔は上を向きスタジアムの天井が見えるはずです.つまり,このFig. 6は篠原がドゥイエを効果的に制御していることを示しています.Fig. 7(a),(b)は角度を変えた別の写真です.ここでもドゥイエの体は畳のどこにも着いておらず,篠原の右足は畳で踏ん張っています.ドゥイエはもはや背中から畳に落ちるしかありません.ドゥイエは空中にいるのですから,もちろん自分から転がることは出来ません.
Fig. 8はドゥイエが畳に着く瞬間です.このときようやく篠原の右足は畳から離れます.しかし,一方,篠原の右手はドゥイエの左手を完全にコントロールし続けています.Fig. 9は角度を変えた写真です.篠原の左手はドゥイエの体を完全にコントロールし続けています.
Fig. 10ではドゥイエの背中は完全に畳に着いています.篠原はまだ右腕を着いているだけです.このとき,篠原の左手はドゥイエの胸の上にあってドゥイエの体を制しています.Fig. 11ではそれがもっとはっきりしています.
Fig. 12とFig. 13を見ると篠原は右脇腹から落ちています.完全な内股すかしであれば,篠原は倒れてはいけないという人もいます.ここで,ドゥイエの反則が篠原を脇腹から落としたことを忘れてはいけません.もし大男があなたの帯(またはベルト)を掴み,倒れたとしたらどうでしょうか?誰も立っていられる人間はいません.その反則にも関わらず,篠原はドゥイエを投げるまで倒れなかったことも忘れてはなりません.
Fig. 14でもっとも2人に近い位置にいた副審が一本を宣言していることは全く正しいものです.一本はレスリングのフォールやボクシングのノックアウトに当たるものです.柔道家が彼の敵を投げて,ついにはその敵は背中から畳に落とされます.我々この状況をどう定義すべきですか?その柔道家は当然のことながら一本を得るはずです.しかし,主審はドゥイエに有効を与えました.有効は効果的なポイントを意味します.これがこの決勝戦で最もひどい誤審でした.
ドゥイエが終始優勢に試合を進めていたと主張する人もいます.しかし,篠原はドゥイエの反則技(片袖,片襟,帯を握る)により彼の攻撃を封じられていました.片襟と片袖とは敵の柔道着の片側(右側または左側)を両手で一度に握る反則です.片袖や片襟,帯を握ることを6秒以上続けることは反則です.審判がその反則を取ってくれなかったために,篠原が自分から攻撃する機会はありませんでした.篠原がドゥイエを投げるには返し技しかありませんでした.つまり,敵が攻撃を仕掛ける時にそれをかわして相手の勢いを利用して投げることが唯一の機会です.これは普通に投げるよりもはるかに難しいのです.これこそ「柔よく剛を制す」,柔道のもっとも重要な理念の一つです.これは非常に残念なミスジャッジであったと思います.
参考
- 3人の審判の動きに関する考察
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疑惑の金メダル(2000年シドニーオリンピック柔道男子100Kg超級決勝戦)
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