第2章 広間でのけんか

(1)

秋の終わりに、ルブリンに妹が生まれました。
祭司は聖なる角笛で『月の呼び声』を鳴らして、丘陵地帯に広がる牧のすみずみまで知らしめました。
その夜、族長の館にある広間では盛大な祝宴が催されました。

男の子をもつことは喜ばしいことではありましたが、ルブリンの一族では王と族長の権威は父から息子へではなく、娘を介してその夫へと授けられます。
ティガナンが族長であるのも、元族長の娘、つまり『一族の女』と結婚したからです。
ですから、一族はしきたりに従い、族長に娘が生まれ跡継ぎができたことを祝う宴を催したのでした。

いつもの晩であれば、ルブリンは飲み食いが始まる前に女たちの館で、ぶちの羊皮にくるまって眠りに着いていたことでしょう。
でも今夜は特別な夜なので、女たちは皆忙しそうに立ち回り、丘砦の子供はみな猟犬とテーブルの下にもぐりこんでいました。
戦士達が骨や肉の切れっぱしを猟犬に投げ与えたので、子供たちもその分け前にあずかることができました。
ルブリンも、豚肉や蜂蜜がけのあなぐま肉をたらふく食べることができたので、幸せ一杯でした。

生まれた娘と、いつの日かその夫になる未だ見ぬ戦士を祝福して、盃が賑やかに酌み交わされました。

「東の牧から一族を導きし勇者のごとく!」

族長付きの戦士たちはそう叫びながら、特別な祝いの席でなければ口にすることのできない深色の高級ギリシャワインをぐいぐいと飲んでいました。
やがて誰も何も言わなくなった頃、暖炉の前で自分の腰かけに座っていた竪琴弾きのシノックが、黒樫の小さな琴を撫でるようにして、まるで自分の鷹の目を覚まさせ、羽ばたかせようとするかのように音合わせを始めました。
やがて頭を後ろに傾げて謡いだしたのはいにしえの唄、まだこの世界が明けたばかりの頃に一族の若者たちが新たな牧を求めて、女王の末の男子に従って東の草原から旅立ったことを物語る馬追い唄でした。


「いざっ」

末の男子は言った

「たてがみ高く、こころ荒ぶる馬群を従え、

行く手を西へと定め、

銀の林檎のなる地を目指し、我に続けっ!」

馬の蹄は雷(いかづち)のごとく連なる丘を震わせ、

戦車の土煙は太陽ヘと舞い上がった


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