第3章 行商人の土産話

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行商人は、深紅の布の上に小さな金色の玉飾りをポンとほおり投げました。
そして、玉についている短い輪っかをつまみ上げると、両の手の間で投げ交わしました。

「それは何かね?」

族長は尋ねました。

「初めて見るようだが。」

「御夫人方の髪を飾るリンゴでございます。エリウの上品な御夫人方の間で、今流行っているものです。髪をいくつもの小さなお下げに編んで・・・そうですね、両手の指の数よりも多くですか・・・そしてお下げの先にこのリンゴを付けるのです。とてもかわいらしいですよ。」

「ほぅ、エリウの流行(はやり)か。 おまえは今度(こたび)はエリウの方から来たのか?」

「私はこの夏の始め、エリウにおりましたが、なにか?」

族長はとるに足りないことだというように、肩をすくめてみせました。

「エリウからやってくる商人達は、いつも大抵は西からの道を通ってくるからな。」

「私はエリウから北上して、島の方へと横切り、アルブへと出ました。それは新しい道でした。誰も通ったことのない道は良い道であることが多いのですが・・・」

行商人は首を横に振って続けました。

「私はもう二度と通らないでしょう。山と海の間には、ほとんど人が住んでいないのです。大きな湖と何もない荒れ地ばかりでしたから。でもあなた方にとっては、また違った手ごたえを感じられることでしょう! からっぽの土地、馬の群れを放すのにうってつけの広い牧草地、ヘーゼルの森からヒースの平原にかけてのそこここに生えている良質の牧草・・・。」

松明の明りの中、互いに顔を見合わせた若者たちの頭には、シノックの『西への馬追い唄』の情景が沸き上がってきました。
ルブリンにはその躍動がまざまざと感じられ、気が遠くなるほどに高まる鼓動は他の者に伝わるほどでした。
彼の瞳が輝くダラの眼差しと重なった時、自分の中にあるのと同じものを感じました。
そして、行商人の語るとりどりの言葉といにしえの唄の記憶のなかから、二人の間にひとつの夢が生まれたのでした。

さて、ティガナンは妻の方を振り向きました。
ルブリンの母でもある彼女は、玉座の横に積まれた鹿皮のクッションの上に座っていました。

「サバ、そなたも髪をそのように束ねたいかね?」

サバは首を横に振りました。
イケーニの女達がよくしているように、彼女の髪も刺繍があしらわれた網(ネット)の中におさめられていました。

「私はエリウの女たちの間で流行っているからといって、私のやり方を変えたいとは思いません。何か贈り物をくださるのでしたら、こちらにしていただけませんか。」

そう言うと彼女は、磨かれた青銅製の鏡を手にとりました。
その背面には青と緑のエナメルで彩られた丁寧な仕上げの彫刻が施され、編み込まれた銀の柄がついていました。

「そなたへの贈り物なのだから、そなたが選べば良い。」

ティガナンはそう言うと、行商人に向かって

「鏡と引き換えに何を持って行くかね?」

と聞きました。
取り引きが続けられている間、青銅細工師のゴールトは前かがみになり手を差し出しました。

「奥様、見せていただいてもよろしいでしょうか?」



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