
第5章 南から押し寄せるもの
(3) やがて、掘りかまどが開けられ、7つの種類の木を燃やした焚き火を囲んで宴が始まりました。
女達は晩夏の黄昏の中、火明かりを頼りに大壷に満たされたワインや大麦ビールを注いで回ります。
そして、辺りがとっぷりと暮れた後も、男も女も踊りに興じました。
向かい合って列をつくり、前に出たり後ろに下がったりしながら、高く澄んだ笛の音(ね)や手のひらや指、拳が打つ狼皮の太鼓の鼓動に合わせて、始めはゆっくり、そして次第にテンポを早めながら踊るのです。
そのうち先頭のダラとテレリを皮切りに、戦士たちが隣の女たちの手をとり、まるで蛇が脱皮をするように列を離れていき、今度は焚き火の周りを太陽回りに勢いを増しながら回り始めました。
その影は、まるで炉火の中でぐるぐると円を描いて飛ぶ大きな黒い蛾のようでした。
ルブリンは、丘陵の外の開拓地から来ていた赤毛の笑っている女の子と踊っていましたが、ふいに太鼓のリズムの向こうに、何か別の鼓動が聞こえるような気がしました。
とてもさし迫った何か、絶望的なまでにさし迫った何かがもうそこまで来ている・・・それはもはや感じではなく、はっきりとした音となって聞こえています。
他のものたちもほぼ同時に気づき始め、太鼓の音がひとつふたつと鳴り止んでいきました。
踊り手も身体を揺すったり足を踏みならすのを止めて、まるで根が生えたようにその場に立ち尽くしています。
皆は、ただひとつ残された門の方に顔を向けました。
夏の日射しに固まった小道を蹴る乱れたリズムは、馬がよろめき倒れる寸前であることを物語っていましたが、猛烈なそのスピードは緩まることなく近づいて来ます。
土手道にまで達したその音は門から突入してきたと思うと、暗闇から焚き火と篝火(トーチ)の揺らめきの中へと一気に躍り出ました。
「アトリベイツだ! アトリベイツが進軍してきた! 北へと向かって来ている!」
走り疲れた馬の上で、乗り手は急の知らせを叫んだかと思うと、よろめきながらも手綱をさばいて馬を止め、その背から転がり落ちました。