
第8章 取引
(5) クラドックは眉を上げました。
「ルブリン、征服された族長の息子よ、どんな取引だ?」
「もし僕が作り終えた暁には、我が民の生き残りを解放してもらいたい。そして、別の土地で新たに群れを成せるだけの十分な数の種馬と牝馬を与えて欲しいのです。」
(ルブリンは心の中で、何年か前に行商人から聞いた「ヘーゼルの森からヒースの平原にかけて、そこここに良く繁る牧草」のことを思い起していました。)
「彼らを行かせて下さい。」
「ずいぶんと値が張るな。」クラドックは言いました。
「もちろん、太陽の馬の出来に納得してもらえたら、ですが。」
「もっともな言い分ではあるな」
酒杯のワインを見つめていた族長が、不意に顔を上げました。
「そう、ならばそうするとしよう。さっきも言ったが、新しい塁壁も完成したも同然だ。古き民も奴らのしきたり通り、這い戻り始めている。もし、俺を満足させる太陽の馬を作ることが出来たなら、お前の民は自由にしてやろう。これは、お前と俺の間の取引だ・・・さて、今宵の馬の絵は見応えがあったぞ。」
ルブリンは族長の広間を後にしました。
彼は広間にいるあいだ中、ずっと気付いていたのです。
互いの間で語られない、考えられさえしない何かが、奥深くで待っていることに。