第8章 取引

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その夜遅く、丘砦を巡る内堤と外堤の間に置かれた檻でルブリン・デュは、族長の炉辺での出来事を話して聞かせるため、ぼろ布のようになった一族の生き残りを集めました。
しかし、かまどの火と昇りゆく月の光が入り交じる中で、こちらを向いている一人一人の顔を見渡すと、なかなか口を開くことが出来ません。
端(はな)から楽なこととは思っていませんでしたが、思うよりずっと難しいことでした。

クノが尋ねました。

「ところで族長の耳と口さんよ、族長は何をお望みだったのかい?」

「炉石に馬を描いて、竪琴弾きの唄に飽きた自分を楽しませろと。望みどおりたくさん馬を描いたら、今度は太陽の馬を作れるかと言ってきた。北の斜面の芝地に彫り込んでだ。丘の中腹にアトリベイツの境界の標(しるし)を作れと。」

「それでお前はなんて言ったんだ?」

「分からないと言った。その気になれば方法はあるかもしれない、と答えた。」

「それであんたにはその気があるのか?」

別の誰かが言いました。
クノは、灯りの方へ身を乗り出すと

「お前は族長が命じたことを拒んだのに、こうして易々と戻って来れたというのか? お前の腹にはまだ腸が入っていて、肩には頭が乗っかってるっていうのに? 鵜呑みにできないな。」

「いいや」ルブリンはゆっくりと言いました。
「拒んだわけじゃない。あることと引き換えならやってみると言った。」

ルブリンの妹テレリが話に割り込みました。
空の月明かりに照らされた顔は、蒼白の仮面のようです。

「あなたの仕事はさぞや簡単なことでしょうね。あいつらの金貨に描かれた馬を真似て描けばいいのだから。あなたに支払われる金貨に描かれているのなんてどうかしら?」

彼女の声はその顔色と同じように激しく、そして冷たく責め立てていました。
残りの者たちの沈黙も、ルブリンを責めているように感じられました。

「あの馬の尻尾は駄目だ。」

思わずルブリンが言いました。
それがさも重大なことであるかのように。

「我らの馬の尻尾は、もっと違ったふうに生えている。」

「でもあなたが作るのは、あいつらの馬なんでしょ。」

「ああ、確かにあいつらの馬、アトリベイツの太陽の馬さ。でもそれは月の馬、我ら一族の馬でもあるんだ。こうして森の向こうに丘陵が続き、仔馬の母なるエポナの神に人々が祈りを捧げ続ける限り、ここにイケー二が居たことを知るだろう。」

森の中ではからかうようにフクロウが鳴き、月の光のように冷たい静寂があたりを包んでいました。
ルブリンは寒気を感じると同時に、誰もがテレリと同じように自分を裏切り者だと思っていることを知ったのです。
そしてしばらくの間、怒りと深い悲しみから、その誤解を解くための言葉を見つけることができませんでした。











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