発想
1. プロジェクト発想の必要性
- プロジェクトの成果の一つは、次の式での式で表示されます。 収入-コスト=粗利>(収入*期待粗利率)
- プロジェクトの完成により顧客から受け取る代金(サービスの対価)がプロジェクトの収入であり、収入を得るために要した費用がコストです。このようなコストにはプロジェクト費用だけを含み、営業費、本社費などは含みません。したがって「収入-コスト」は粗利です。会社が継続して存在するには、請け負うプロジェクトは利益を計上する必要があります
- 営業費や本社費を合わせて仮に収入の10%とすると、プロジェクトは期待粗利率、例えば13%を達成せねばなりません。プロジェクト収入が1億円の場合、粗利8百万円ならプロジェクトとしては黒字ですが、会社としては赤字です。
- 期待粗利率以下でもプロジェクトを行うのは、A:顧客からの次の仕事に期待する、B:他の顧客への波及効果を期待する、C:実行段階で利益を生み出す、ことが考えられます。A、Bは経営戦略です。問題はCの場合です。
- 実際のプロジェクトは、C:「実行段階で利益を生み出す」が大半でしょう。その方法としては、「a:コストを下げる」、「b:収入を増やす」、しかありません。
- プロジェクト受注時あるいはスタート時に、実行予算を組みます。この予算は当然、「むだ、むら、むり」がないように配慮した予算であるべきです。人、物、機械の数量を最少にし、時間(工程)を節約し、スペース(レイアウト)を最適化したものにします。
- 先ずなすべきは、プロジェクトメンバーの選定です。古い言葉で、少数精鋭主義と言います。少人数の優秀なメンバーだけでプロジェクトを実行します。その上でさらに、「a:コストを下げる」ことを検討します。コストは、人件費、機械代、工事代など、社内、メーカーや下請けで発生します。
- 安易なコストダウンは、メーカーいじめとか業者泣かせと言われる方法です。例えば、出入りの業者に自分の都合だけを説明して、一律20%カットだなどと指示することです。「百姓と胡麻の油」の論理を適用しても反感を買うだけで、自発的な協力は得られません。さらに悪質なのは、機械の性能や材質を落としたり、工事の手抜きをしたりしてコストの削減を図る方法です。
- コスト削減は、「Value Analysis(価値分析)」または「Value Engineering」 により行います。これは、目標とするものの価値を分析し、機能を維持したままでコストだけを下げます。プラントで機械の配置、台数、仕様について、当初の目的、性能を変えずにコストを削減します。さらに、機器や部品を統一し、共通化することによって設計・製作・管理の手間を省きます。また、調達方法を変えて、新規引き合い先を加える、工事の施工方法を合理化するなどを行います。すなわち知恵を搾り出してコスト削減を行うものです。なお、VA、VEを、価値=機能/コストの算式から捕らえる考え方もあります。この場合、コストを変えずに機能だけ上げることもVA、VEになります。製品開発で適用されます。
- プロジェクトの削減コストの70%は、プロジェクトの初期段階で決まると言われています。構想設計、基本設計の段階でVE、VAを行えば、要した費用に比べて大きな効果が得られます。プロジェクトの基本構想ができた段階で、経営者(トップ)はこのプロジェクトで行ったVA、VEの項目を要求します
- 一方、「b:収入を増やす」ために、契約の追加だ、契約変更だと言って、顧客から受け取る代金を増す話を良く聞きます。プロマネの中には、相手からいくらせしめた、と自慢する人もいます。実質的な仕事量を変えずに、収入だけを増やすことは悪徳です。
- 収入を増やすためには、今の顧客、関連した顧客、新規な顧客から同じ種類の案件を引き続き受注をする、関連案件を売り込む、あるいは全く別の種類の案件を手懸けます。そのためには顧客の開拓(マーケティング)を行うとともに、新規な技術、時代の先端を行く製品(研究開発)が必要です。顧客に受け入れられる案件を顧客へ売り込む必要があります。これはプロマネの仕事の限外かも知れませんが。
- 激しい、グローバルの競争下で、しかも動きの早い時代ではいつ赤字経営に転落するか分かりません。経営者とは、社外に目を向けて、新規に何をして収入を増やすかを考え、今の事業から撤退をしてもそれ以上の新規事業を立ち上げる人です。プロマネも経営者の一人であるとの意識を持つことが大事です。受注したプロジェクトから、プロジェクトを実行しながら(限られれたリソースを使いつつ)利益を生み出すのは至難の業です。だがこの一見矛盾した仕事にチャレンジするのも遣り甲斐の一つです。
2. 顧客対応の発想
参考
商品(製品、技術)と市場(顧客)との関係
AとBのルート
現在手持ちの商品(プロジェクトでは、現在得意とする案件)を現在の顧客にだけ売るのでは限界があり、新規の顧客の開拓(顧客の創造)が必要になります。
CとDのルート
一方、現在手持ちの商品では先がないので、新規の商品を開発する必要があります。これをどの顧客に売るかが問題です。
それぞれのルートで、どのようにして売るのか、どのような付随的なサービス(付加価値)をつけるかも問題になります。
ここでは、現在のお客を頭に描いて、どのような新規分野のプロジェクトを提案するかを考えます。
- 少々高い投資額でもそれにより生み出される利益が大きく、またその成長性が高ければ、顧客は投資を行います。そのような新規なプロジェクトを創り出すことがプロジェクト発想です。ただし、あまりにも既存分野から離れたプロジェクトを企画すると、経験不足のため失敗の原因になります。
- 新規分野のプロジェクトとは、「顧客が喜ぶ」仕事をする。「こんなのが欲しかったんだ」と喜ぶものを提供することです。「顧客に喜んでもらう」ためには、顧客の気付かない、「潜在的ニーズ」を提供する必要があります。潜在的なニーズとは何かを考えます。
- 「顧客」が一般大衆であれば、それはあなたの家族や友人が喜ぶものです。貴方の10歳の子供の後ろには、国内だけで127万人の子供がいることを考えます。
- 「顧客」が取引企業であれば、潜在的ニーズとはその企業が気付かないものです。例えば、見たことのない機械、プロセス、製品、あるいは、会ったことのない使用者、知らない市場です。
- 「顧客」が行政であれば、地域住民が待ち望んでいるプロジェクトです。政治家や官僚の接待や寄金で手に入れるものでもありません。
- 右肩上がりの経済が消滅した現在、プロジェクト組織が生き残るのは大変です。顧客の提案に対して代案を提案する「提案型営業」では間に合いません。
- 顧客ごとにその業界の常識、専門的な知識を持ち、コミュニケーション力、問題発見力、それに創造性をもとに発想し、「何をプロジェクト化するか」を構想し、具体化します。プロジェクト組織も今まで以上に汗と知恵を出すとともに独創性、発想を必要とします。
- 顧客は細分化され、非常に多様性に富んできています。しかも移り気が早く、捕らえどころがなくなってきています。そのような顧客の、耳に聞こえない声、真のニーズを掴むには感度の高いセンサー、感性が必要です。
3. 発想の仕組み
1)概要
- データをある意図をもって収集したものが情報です。取り込まれた情報は、人間の左右の脳で処理され、内部に保存されます。経験を含むこの情報が整理されて知識になり、技術力になり、これをもとに知恵を出し工夫を凝らします。
- このように頭を使って論理的に考えるのは、知性、即ち主に左脳の働きです。一方、画像、趣味、スポーツなど人の感性を扱うのは主に右脳の働きです。左右の脳を前頭葉が制御して発想に導きます。
- まとめると、左右の脳と前頭葉の働きで人間の「知情意」が発揮され、人間らしい生き方ができて発想が生まれます。人材こそ発想の根元です。
- 「現在のやり方が今後もこのままではいけない、革新が必要だ」と発想した人こそ、発想できる人です。革新の発想を生み出すための仕組みと方法を整理します。
- 繰り返しますが、発想、創造性がが生まれるには、知識がニーズに結び付く必要があります。しかもニーズは切迫感がないと駄目です。「えらいこっちゃ」と思わないと知恵は出てきません。そのために、日頃から知識を貯めておかねばなりません。
- ニーズを分析して問題を絞り込んでゆく。問題を具体化してゆくと発想が出易くなります。
2)詳論
- 発想は一人の人間、個個の人間の脳で行われます。グループでは各人の思考の方向を揃えると大きな力になります。人間の脳のメカニズムについて以下整理します。
- 大脳の左脳は主に、言葉や数字などのディジタルの情報、右脳は主に、芸術、スポーツ、情緒などのアナログの情報を受け取り処理します。人が受け取った情報や経験は、海馬や側頭葉を含め大脳の各部に記憶として蓄えられます。大脳の総司令本部の、前頭連合野がこの記憶(顕在または潜在した意識)を引き出し、組み合わせたり、加工したりして、新規なアイデア、ひらめきを生み出します。
- 大脳を活性化することで発想を煽ることができます。例えば、問題に自ら解決の期限を設ける。目標を宣言して後戻りできないように自分を追い詰める。このように緊迫感を高めると、発想が促されます。しかし、ときには、成功したときをイメージして気持ちを楽にすることも大切です。
- 大脳の記憶領域に大量の情報がないとひらめきは出て来ません。そのために、さまざまな経験をし、実験をします。また資料や他人からから数多くの情報を入手します。視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の五感を利用して情報を入手します。
- 問題をよく把握して、問題に関する資料や情報をさらに集め、記憶を補強します。そしてとことん考えます。問題を前後左右から、上下から、あるいはひっくり返して考えます。ぼんやりと考えても発想は出て来ません。さらに自分だけで考えるのでなく、人の力も利用します。
- 発想は机上だけでできるものではありません。頭で考えるだけでなく、実際に手足を使って試作や実験を行い、あるいは現場へ出掛け現場で見聞きすることによってすばらしい発想が出ます。(セレンディピティになる場合もあります)。
- 「継続は力なり」。繰り返し時間をかけて、情報を集め、思考します。「現場百遍」、「犬も歩けば棒に当たる」。問題の周辺や現場を歩き廻り、自分の五感で情報を集めます。
- とことん、極限まで考えたところで、考えることを止めて大脳をリラックスさせます。ぶらぶらと散歩したり、軽い運動したり、メロディーだけのCDを聴いたりします。人と雑談を楽しみ、軽くアルコールを飲み、一眠りします。あるいは、しばらくの間、他の仕事に精を出します。こうして本人が意識しない間に、大脳の中で知識が整理され思考が昇華して、ひらめきが出てきます。
- ビールは材料のモルトを煮込み、次いで低温で数週間かけて発酵、熟成させます。酵母の出す酵素により発酵します。発酵は人の発想に相当します。人の発想過程で酵素の働きをするのは、その人の意欲ではないかと思います。意欲がどこから出てくるかはその人が育ってきた環境、受けた教育、経験や体験、現在の状況次第です。好奇心、執着心、名誉心、支配欲、出世欲、家族愛、愛社心、愛国心、人類愛、社会貢献欲、自己実現欲、などさまざまな欲求、願望、夢、志しがその引き金になるのだと考えます。
参考1 : 発想の技法
世の中にはさまざまな技法があります。主な技法を次に示します。問題の内容に応じて使用すると発想に役立ちます。
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