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PMコスト管理 (コスト)

  1. プロジェクトの「コスト」、「スケジュール」、「品質」、「リスク」の4要素の中で、特にコスト(予算)とスケジュール(工程)の管理は大切です。この2要素を簡単な図表にして同時に管理するツールを紹介します。 (注:コストはスケジュールと同時に管理しないと意味がありません)。
  2. 仕事を始めるに当たって、関係者(プロジェクトメンバー)全員が集まり、予定表と予算表を作ります。 これをもとに1枚の管理表を作り、プロジェクトを管理してゆきます。 
  3. ここでは、「小規模のプラント建設」を例に、エクセルで作成した月単位の管理表を説明します。なお、日本企業は国内外で、プラント建設プロジェクトのほとんどをランプサム契約(固定価格)で受注します。それに呼応して、機材はもちろん、設計や工事も一括した固定価格になります。よって支払も、機材の納入時払い、工事の出来高払いで行います。このツールは、そのようなランプサム契約・出来高払い方式のコスト管理用です。

スケジュール・コスト管理表(出来高払い方式、ACWP=BCWP)
ご興味のある方は、このページの下から、エクセルファイルをダウンロードできます。

一月に工事を開始し、八月に終わるプロジェクトです。 1,200万円の実行予算(BCWS)です。
なお、この管理表では、コストすなわち費用の支払は、出来高払い(BCWP)のみとしています。例えば、道路1000Mを舗装する工事で、600Mを舗装すると出来高60%になります。実行予算の100%を支払った時点でその仕事は完了します。その意味で出来高(BCWP)の査定が非常に重要です。国によっては出来高査定の専門家を雇用することもあります。

1. 計画

プロジェクトのスタートにあたり、作業項目、実行予算、スケジュールをまとめます。 実行予算を月毎に配分します。 その月にフル稼働する予定であれば1とします。

作業 予算 スケジュール
項目 費用(百万円) 一月 二月 三月 四月 五月 六月 七月 八月
土木・建築 200 0.5 1 0.7
機械工事 500 1 1 1 0.3
電気工事 200 0.5 1 1
計装工事 200 1 0.8
試験・操業 100 0.2 0.2 0.6
 合計 1,200

2. 実績

工事開始(一月)以来、今月末(五月)までの実際の進捗状況を記入します。 記入する数値は、それぞれの項目に対する進捗率(出来高または達成率)です。例えば機械工事全体の半分を完了すれば50%とします。進捗率の基準(機械工事では、機器据付台数とか配管工事量とか)は計画当初に定義します。 
残工事の欄には、その月末(例では五月)に推定した、残工事の合計量(予算に対する比率)を記載します。

作業 進捗状況 残工事
項目 一月 二月 三月 四月 五月 六月 七月 八月 %表示
土木・建築 20% 35% 30% 10% 0%
機械工事 25% 25% 30% 30%
電気工事 30% 35% 40%
計装工事 5% 90%
試験・操業 100%

3. 総合実績

上記の表をもとにMS Excel ソフトにより、全体に対する割合を自動的に計算します。計算結果は次表の通り。

作業 進捗状況
一月 二月 三月 四月 五月 六月 七月 八月
計画 3.8% 7.6% 17.9% 16.0% 19.3% 21.4% 9.1% 5.0%
実際 3.3% 5.8% 15.4% 17.1% 19.2% 0.0% 0.0% 0.0%
計画・累計 3.8% 11.4% 29.3% 45.3% 64.5% 85.9% 95.0% 100.0%
実際・累計 3.3% 9.2% 24.6% 41.7% 60.8% 60.8% 60.8% 60.8%

4. 総合実績のグラフと工事別の実績・見通しのグラフ

計画と実際の進捗状況は自動的にグラフに示されます。月末毎に、プロジェクトメンバーが集まり、計画と実績のずれの原因、今後の見通し、工程短縮のための対策を検討します。さらに、各工事業者もしくは工事担当者は、予算と、現在の実績と今後の見通しとの対応を見て、対策を考えます。

進捗グラフ 工事別進捗

注: 上記PMツールは、G.Iinuma 氏により考案されたもので、氏のご好意により掲載しています。さらに、この考えを発展させて、工事別・業者別の実績と予測を追加しました。
スケジュール・コスト管理表 ( PmCost.xls 45KB )のダウンロードはこちらDownload(インターネット・エクスプローラにより可能です)


5. 工程遅れと予算オーバー

  1. 上記のような一ヶ月単位の管理表を使用して、工程遅れや予算オーバーが明確になってから対策を取るようでは実際には、手遅れです。
  2. 建設工事では担当者が毎日、現場を見て周り、さらに一週間毎に、進捗状況と今後の予定を検討 して、スケジュールを検討し、遅れそうであれば直ちに対策を取ります。
  3. 遅れの直接原因を追求してそれを除きます。材料の入荷遅れ、作業要員の不足など目に見える原因であれば話は簡単です。
  4. 天候不順など漫然とした原因の場合、スケジュールに追いつくために、残業休出、作業要員の増加、作業機械の増加、階や場所を変えての同時並行作業の実施、他の業者の導入、次段階作業の早期着手など、case by caseでさまざまな対策を取ります。
  5. 基準計画(baseline)に誤りがある場合は、その原因を調べて今後の計画を修正する必要があります。工程遅れは、その作業だけでなく、他の、また今後の作業の工程にも影響するので、早め早めの対策を取ります。
  6. ランプサム契約によるプラント工事では、追加・変更工事がコスト増加の大 きな原因になります。施主からの予算裏付けのない追加要求や工事業者からの変更要求に、安易な妥協をしないようにします。「変更と交渉」を参照してください。
  7. また品質トラブルや事故が思わぬコストオーバーの原因になります。「品質」および「安全」のページを参照してください。
  8. なお一ヶ月単位の進捗管理は、チームメンバーが工事状況を確認するとともに、進捗状況や遅れの影響を関係者にPRするのに役立ちます。
  9. プロジェクトの終結時には、工程、コストともにスタート時の計画値以内に収まって初めてプロジェクトは成功したといえます。しかし実際には、建設プロジェクトで当初計画の±2〜3%のコスト相違が出ることがあります。さらに研究開発プロジェクトでは±10〜15%になることもあります。

参考: 出来高分析(Earned Value Analysis)

  1. プロジェクト実行に際して、支払が出来高でなく、パートタイム契約やレンタル契約のように時間や日数の単価契約により行われる場合があります。この場合、支払金額(ACWP)と仕事の出来高による金額(BCWP)が一致しません。
  2. 支払金額(消費実績、ACWP)が、(作業時間*時間単価)や(作業日数*工数単価)で計算される場合には、業務の実際の出来高による分析(EVA)を行わないとコスト管理ができません。(注:このページのトップに記載した出来高払いのみの場合は、EVA分析は不要です)。
    注:BCWS、BCWP、ACWPなどの用語については、PM用語集を参照願います。
サムネイルで表示していますので図をクリックしてください。

注:EVA(出来高分析)については、James P. Lewis 「Project Planning, Scheduling and Control」 を参照した。