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品質 プロジェクト品質 

1. プロジェクトの品質 

  1. プロジェクトの「スケジュール」、「コスト」、「品質」、「リスク」の4要素の中で、品質はよく忘れられます。 
  2. プロジェクトを開始するに当たって、関係者全員が集まり、品質上のリスクについて考えます。
  3. 「品質」に常に留意をすれば「スケジュール」、「コスト」は容易に達成されます。

2. 品質の重要性 

  1. プロジェクトで顧客から要求される事項は、(1)高度の性能を持っていること、(2)一日も早く実現すること、(3)技術レベルが高いこと、(4)価格が安いこと、(5)欠陥がないこと、です。
  2. 納入する製品の品質の不良、欠陥が発生すれば、顧客の信頼を失うだけでなく、欠陥対策、修復のために多大の人員、時間、費用を要します。
  3. 顧客に満足してもらえる製品、例えばプラントを顧客に納入するには、契約、設計、機材調達、建設の各段階で品質に対する配慮、いわゆる総合品質管理(TQM)が必要になります。
  4. 結論として、品質はプロジェクトに関わる全員が参加すべきテーマです。品質保証部門はプロジェクトを支援するだけです。

3. 品質の基準

  1. 契約の段階で、顧客の要求する性能、仕様、基準、検査方法、保証を明確にしておきます。例えば、溶接部の検査方法、建築の雨漏れは建築後20年間、機材については納入後1年半、生産開始後1年間保証などとと明確に規定します。
  2. そのためには、先ず自社の品質基準を顧客に提示してどこまでが自社基準、業界基準または国家基準で達成できるかをはっきりさせます。
  3. このプロジェクトで特別に採用する品質基準があれば、それをプロジェクトメンバーによく認識させます。特に、薬品による腐食、高温への断熱性、反応による耐圧性、高速による危険性などプロジェクト特有の問題が予想される場合は、その影響やリスクについて予測が必要です。

4. 恐怖の欠陥

欠陥影響度
  1. プロジェクトの実施段階で品質不良による欠陥が発見された場合、悲惨であり悲劇です。
  2. 設計・製作時のに生じた欠陥が内在し、工事段階で姿を現す場合を想像してください。概念図に示すように、欠陥の発見が遅れるほどその被害は大きくなります。
  3. 具体的には、「先ず欠陥を取り除く費用+新たに良品を設置する費用」からなる修復費用が必要です。これは、プロジェクトの進捗度が進んでいる場合ほど大きくなります。
  4. 更に、欠陥の修復を行うために工事工程が影響を受けます。この影響もプロジェクトの最終段階に近いほど大きくなります。
  5. 実際には、工事工程の遅れを生じないように様々な対策が取られます。これはすべて、工事費用の増加になります。
  6. 特に、プラントが顧客の手に渡ってから欠陥が発生する場合は、顧客からプラントの停止に伴う機会損失まで請求されかねません.。.
  7. 新製品開発プロジェクトでは、1:10:100の法則があるといわれます。これは、設計:製作:市場=1:10:100 を意味します。トラブルが発生した場合、設計段階では図面の修正などですみますが、生産段階では材料や手間の侵害など10倍になります。製品を上市後にクレームが出てくると、製品の回収などで100倍になることを意味します。 さらに最近はトラブルへの対応が拙い場合、企業の社会的信用を喪失することもあります。

5. 品質コスト

品質効果
  1. .品質コストには、欠陥予防コストと品質評価コストがあります。前者は、顧客の要求条件を満足するための設計資料の確認、機材の購入管理、工事作業員の技術管理などがあります。後者には、機材の受け入れ検査、工事結果の点検などがあります。
  2. 資料の一字毎に、機材一品毎にまたは作業員の一作業毎に、内容、製品や性能の検査をすれば欠陥をゼロにできるでしょう。しかしこの場合、品質コストは増加します。
  3. 逆に、全く品質の観念なしにプロジェクトを実行すれば品質コストは不要ですが、欠陥を修復するための費用が増大します。
  4. 一般論として、品質コストと修復コストの合計が最小になる品質管理を行い、ある程度の品質を維持しつつ、発生する欠陥に迅速に対応する考えがあります。ただし目先のことだけを考えて、問題が生じた場合の修復コストなどを過少に予測してはなりません。
  5. 100%の品質管理ができないときは、プロジェクトには欠陥が内在しいつか必ず姿を現すと考えるべきです。欠陥対策費をプロジェクトの危険費に計上しておくことです。
  6. 最近は、品質100%の全くバラツキのない資材を購入できれば、品質コストが不要になり少々高くてもペイするという考えが広まっています。ましてその資材の採用で、工数が減り工期短縮fができれば逆に利益が出ます。品質コストは高い視野で長期的な観点から考える必要があります。
  7. 販売製品についてもユーザーからのクレームを考えて、欠陥ゼロ(品質100%)をセールスポイントとする管理も出現しています。 
6. 予算削減
  1. プロジェクトの開始時や実行中に、予算の削減が再々提案されます。例えば設計費の10%削減がその良い例です。ここで注意すべきは、予算削減により品質が犠牲になることが多いことです。

    進捗度 初期・ピーク期 末期
    設計費用 80〜90% 20〜10%
    品質への寄与率 10〜20% 90〜80%
  2. 例えば、設計費用が80〜90%の段階では、品質の10〜20%しか貢献を受けません。ところが、最後の段階では、全体の10〜20%に過ぎない作業により品質の90〜80%が決定されます。そこで、予算削減によって、いわゆる設計の「最後の詰め」が甘くなって品質上の欠陥を生む要因になります。同じことが、機材調達、工事などプロジェクトの各段階で考えられます。
    予算に水増しがあれば、上記の問題は生じません。しかし厳しい予算で開始した、金や時間に余裕のないプロジェクトでは注意が必要です。

7. 経験の活用

  1. 全く新規なプロジェクトだけでなく、繰り返しのプロジェクトでも品質問題は発生します。革新技術は十分注意をしますが、慣れきったプロジェクトでは手抜きをして重大な問題を生ずることもあります。
  2. 先ず、過去に実施した様々なプロジェクトについて、品質上の問題、トラブルをよく学習することです。プロジェクトの完結報告書には、成功した話だけではなく、失敗談にも多くのスペースを取ることが大切です。失敗を隠さずに公表する企業風土が育っていることです。
  3. 失敗を避けるために、同じ設計者、同じ機材業者、同じ工事業者を採用していては、コスト削減も技術の進歩もありません。類似の経験、知識さえあれば、プロジェクトメンバーに誰がなってもプロジェクトが実施できるように、過去の経験が営業資料、技術資料として整備されていなければなりません。
  4. 特に海外向けのプラントでは、日本国内では暗示的、常識としてお互いに理解できる事項も、海外では通用しません。文化が異なり、言語が通じない外国では、全てを明文化する必要があります。

8. 現場百見

  1. 設計や購入機材の欠陥は建設現場で現れてきます。品質上の欠陥は、早く発見されれば、それだけ早く処置できて修復費用も少なくて済みます。「現場百見」とは警察の犯罪捜査で使われる言葉ですが、欠陥の早期発見にも適用できます。工事現場を何回も訪れよく観察し、現場の監督者に話しかけます。
  2. 現場は毎日変化します。悪性の病気と同じで悪いところはますます成長を続けます。ところが、昨日まで見えていた所も今日は蓋をされて隠されることもあります。毎日、現場を歩き、人の話を聞き、大事な所では腰を据えてじっくりと調べます。諺にあるように、「犬も歩けば棒に当たる」のです。
  3. プロジェクト担当者にありがちな、自分の失敗を隠し、あるいは対策を後回しにし、あるいは欠陥を他人に押し付けることは許されません。トップおよびプロジェクトマネージャは常に、欠陥の通報者、発見者に先ず感謝することから始めねばなりません。
  4. プロジェクトの段階に応じて、月に一回あるいは週に一回とか、プロジェクトマネージャと担当者が「品質査察」を行います。テーマを決めて現場巡回をしてチェックシートに結果を記入します。
  5. 安全管理は5Sに始まります。品質管理も同じではないかと思います。 5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ)です。決められたことを守っている作業場では、品質も守られています。
  6. 参考:AE法(Acoustic Emission Technique)による機械システムの故障予知法が紹介されています(日本機械学会誌2002/12)。現場を見て歩くことは、AE測定センサーに寄らずして、体で現場の異常を予知することだと思います。

9. 工事指導者

  1. ここで、特に「FOB契約+工事指導者」について品質上の観点から説明します。納入する機材を顧客のプラントに適正に設置し、作動させる役務を帯びて工事指導者が派遣されます。指導者の職務、責任、権限は派遣契約書に明記されています。
  2. ターンキー契約でないので、工事は顧客が工事業者に発注し顧客の責任で実行されます。指導者は、工事の実施に際して工事指導をします。
  3. 工事指導者は一般に、工事内容や工事段取りの説明、据付要領の現場説明、工事結果の検査の指導など品質、安全に関する指導を行う割合が高くなります。逆に品質、安全が工事指導者の仕事ともいえます。工事の量は顧客の責任に、工事の質は工事指導者の責任になりかねません。
  4. プラント工事で多く発生する欠陥には、機材の性能不足、仕様未達成によるものよりは、作業員の技量不足、経験不足、手抜き工事によるものが多い。この場合、工事指導者の責任が問われることがあります。
  5. 工事指導者は、全ての作業員を指導できず、しかも作業員の勤務時間中絶えず指導することもできません。工事指導に際して、口頭でなく紙に書いて顧客の責任者を通じて工事業者に渡るように配慮します。
  6. 工事指導者の仕事は、品質、安全上の問題を早期に発見し、解決することです。そのためには、日頃から顧客の担当者や工事業者と絶えず接触を保ち、コミュニケーションを良くして、信頼を得ます。

10. ピンチはチャンス

プロジェクトでは、様々な問題が生じます。別のページで述べる「変更と交渉」も問題の一つです。ここでは、設計や工事に起因する品質上の問題への、プロマネの対応を考えます。

  1. プロマネになる人は、担当するプロジェクトについて、その技術の完成までにどのような問題があり、どのような失敗がされてきたか、を知ることから仕事を始めます。もちろん、担当プロジェクトだけでなく、社内外の様々なプロジェクトについての幅広い常識が必要なことは言うまでもありません。
  2. このプロジェクトは経験、実績があるから絶対大丈夫である、担当者がしっかりしているから心配ない、と信じるのは危険です。
  3. 特に海外へは開発途上にある技術でなく、完成した、成熟した技術を出すことが多い。しかし完成した技術はすでに硬直化しているので、環境や時代の変化に対応できずに問題を起こします。さらに、コストダウン、スケールアップ、プラント性能のレベルアップの要求に応じている場合、新しい問題を起こします。
  4. 完成した技術の担当者は、失敗の経験がなく技術の知識の幅も狭く、惰性で仕事をしていることが多く、変更や変化に際して部分的、局部的に考え全体を見渡しません。これが問題を起こす原因の一つになります。
  5. 失敗する可能性があるものは、失敗する」は、マーフィの基本法則です。「プロジェクトでは必ずいつの日か問題が発生する」と信じると、問題を検知するアンテナを頭上に掲げることになり、問題を早期発見できます。プロジェクト安全で述べたハインリッヒの1:29:300の法則を適用すれば、重大な品質問題が起こる前には多数の細かな問題が起きています。経験豊富な専門家は、現場を一見しても問題に敏感に気付いてくれます。
  6. プロジェクトマネージャは、問題が発生した場合に本領を発揮せねばなりません。プロマネは問題処理のために存在します。
  7. 問題が発生すればプロマネの出番です。しかし、問題発見を自慢してはなりません。問題を発見するきっかけになった人、通知した人を褒めるべきです。
  8. 問題にどのように対処するか、問題をどのように解決するかによって、プロマネは評価されます。「ピンチはチャンス」
  9. 問題を発見したら、その問題を率直に認めること。問題を引き起こし、過ちを犯した人や組織に気を使い、問題をうやむやにすることは絶対許されません。問題を起こした人を叱り咎めても問題は解決しません。それよりも協力を要請します。問題の原因を明らかにして解決策を考えるのが責任を取ることだと認識させます。
  10. その問題の原因が自分もしくは自分が所属する組織にある場合、人は、問題に目をつぶり、問題を隠蔽し、あるいは内々で問題を処理することを考えます。しかし、人として、技術者として、恥ずかしくないかと考えれば迷うことはありません。
  11. 先ず問題をよく考察してその影響の大きさを調べます。問題に応じて、人と組織を選び、相談します。経験豊富な上司やプロマネ経験者は重要な相談相手です。
  12. 問題を自分だけにとどめ、一人だけで悩み考えてはなりません。そのうちに問題は成長して打てる手も打てなくなります。悪い状況は、放置しておくとなお一層悪くなる(マーフィの法則)。問題を大きく育てて持ち込む人間ほど、組織にとって困った人はいません。日頃から、よく言われる「ほうれんそう」の精神を忘れずに、関係者への報告、連絡、相談を心掛けます。
  13. 問題対策チームをプロジェクトチームの中に作り、目標、期限、費用を明確にしてスタートします。またこのことをプロジェクト開始時と同じように関係先にも公表します。実際には、組織内でこそこそと隠れるように対策を取り、社内のムードをおかしくすることがあります。
  14. 自分や所属部門を守るために、問題を隠し、解決を先送りすることは、プロジェクトチーム、会社組織のみならず、顧客への裏切りです。問題によっては、社会への犯罪にもなります。
  15. プロマネとは、プロジェクトの問題や失敗の責任を負い、汚名や減点を最初に引き受ける者なのです。問題や失敗を表に出せない組織であれば、最初からプロマネにならないことです。
  16. プロジェクトはどういう形にしてもいつの日か終了します。消滅したり、小さくなったり、途中で止まり雨ざらしになったり、終わっても大幅な赤字が出たりします。だが、いずれ終了してチームも解散します。この時間の流れの中で問われるのは、プロマネがどのように動いたかです。プロジェクト開始時と異なる形でプロジェクトを終了しても、プロマネとして恥ずかしくない態度を取ることが、プロジェクト責任を取るということです。
  17. さらに、問題の処理が終われば、その記録を残して再発を防止するのもプロマネの責任です。問題の内容、経過、原因、対処についてまとめ、再発防止の提言まで行います。
  18. プロジェクトが終われば、プロマネもただの人です。だが、大幅な赤字が発生しても、プロジェクトは後世に残ります。大きなトラブルや事故があっても、工事が終わればプラントは稼動します。プロマネの喜びは自分がプロジェクトの実施の過程で全力を尽くしたことであり、名誉や表彰を手にすることではありません。

(注記 : この資料の、5品質コスト,6予算削減 について、Harold Kerznerの「Project Management」1998年版を参照した)


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