用語集 契約 工程 コスト リスク 品質 安全 変更 PM 連絡 発想
紹介 メルマガ リンク 人生 家計簿 TURP 編集

安全  プロジェクト安全

1. 建設プロジェクトの安全

  1. 工事現場で、「安全第一」の標語をよく見かけます。「安全第一」とは、仕事をする場合に、先ず安全を一番目に考えるということです(注2)。
  2. プロジェクトを開始するにあたって、関係者全員が集まり、安全対策を協議し方針を決定します。
  3. ここでは、先ず事故と安全について解説し、いくつかの建設プロジェクトで実行した安全対策を紹介します。
  • 注1:建設プロジェクトのさまざまなリスクの中で、「災害」は確率が高く、かつ発生時の損害が大きいリスクです。
  • 注2:最近の大事故を機として、設備の運転、検査時のコスト優先を「安全最優先」に切り替えた経営トップがいます(朝日新聞平成17年3月31日付け)。経営トップしか、安全第一、コスト第二と明言できる人はいません。

2. 安全の重要性

  1. 死亡すればそれで一生を終わり、家族は生活に困り、親戚も迷惑します。負傷で済んでも痛い目に会うだけでなく一生後遺症に悩まされ、周囲に迷惑を掛けます。しかも同じ仕事に就けず、収入も減少します。
  2. 工事中に事故が発生すると、工事は直ちに中止されます。再開後も交代要員の手配や工事遅れのため現場に大きな影響を残します。雇い主は治療費、入院費、補償費を支払い、破損した設備や機械も修理します。
  3. 工事を発注したお客にとって、重大事故は名誉なことではありません。発注者としての責任を問われ、社会的な制裁を受けることもあります。
  4. 工事を請け負ったコントラクターは工事管理責任を問われ、報告書を役所に提出します。責任者は処罰を受けるだけでなく、今後のビジネス活動に支障を来たすこともあります。

3. 建設工事の事故データ

  1. 建設業(総合工事業)は他の産業に比べて、労働災害の度数率は低いが強度率が非常に高い。これは建設業では重大事故が多いことを意味します。
    項目 総合工事業 一般産業
    度数率 1.09 1.62
    強度率 0.14 0.09
    損失日数 126.0 56.9
    注:一般産業は総合工事業を除く。参考:平成21年度のデータ(厚生労働省統計)による。災害の発生頻度を示す度数率は、百万時間当たりの死傷者数、災害の程度を示す強度率は、百万時間当たりの労働損失日数。損失日数は死傷者一人平均労働損失日数である。
  2. 建設業の死亡災害は、高所作業での墜落・転落が最も多くおよそ40%を占めます。これに交通事故、崩壊・倒壊、挟まれ・巻き込まれ、飛来・落下が続きます。平成23年1月〜12月の死亡災害数(東日本大震災を除く)は、341名(全産業1004名)、墜落・転落154名、交通事故(道路)51名、はさまれ・巻き込まれ29名、崩壊・倒壊23名でした。
  3. 死傷者も転落・墜落が最多であり、切れ・こすれ、飛来・落下、挟まれ・巻き込まれが続きます。ちなみに高所作業とは一般に、地面から1.5Mの高さでの作業を言います。 安全衛生情報センターの「労働災害発生速報」で、業種別、事故の型別の最新の死亡災害情報を知ることができます。

4. 建設現場の危険性

  1. 建設現場は現代の3K職場と言われます。3Kとは、危険、汚い、きついのことです。ちなみに昔の3Kは、臭い、汚い、きついの農業でした。
  2. 作業は屋外でしかも厳しい環境(暑い、寒い、風通しの悪い、暗い、高い、狭い)のもとに行われることが多い。
  3. 作業場所も作業の種類も毎日変化する。材料や機械も毎日入れ替わる。
  4. 作業施設は永久的なものではなく、仮設が多い。
  5. 作業者は絶えず変わり、新しく参加する者が多く、しかも未経験者、若年者、高齢者が多い。
  6. 工期に追われ、安値受注が多いので、しわ寄せが安全対策の手抜きになり勝ち。

5. 墜落事故の実際
    2001年2月6日の朝日新聞の引用記事です。この現実に対し、現場責任者はどう対処したらよいでしょうか?

  1. 建設業で働く人は全労働者の10%に当たるが、労働災害の死亡事故では40%を占めている。中でも多いのが墜落事故である。
  2. 中央労働基準局が1999年に都内の建設現場で起きた99件の墜落事故を調査した。9人が死亡し、4人に後遺症が残り、64人が一ヶ月以上休業する重傷を負っていた。事故の際、70%近くが安全帯を腰に巻きつけていたが、そのうち80%がフックを引っ掛けていなかった。
  3. 事故は月曜日と金曜日が多く、午前中に発生する割合が多い。四人に一人が現場に入った初日に事故に会い、三人に一人は三メートル未満の高さから落ちていた。  

6. 安全の三要素(事故の三原因)

1.  物(施設)、人(行動)および組織(管理)を安全の三要素と言います。
2.  安全な施設上で安全な行動をすれば、事故は起きません。
3.  無災害の状況を実現するには、物と人を管理するしっかりした組織が重要です。
    

7. 事故の原因

災害発生の要因 災害発生要因の割合
  1. 不安全な状態の物と不安全な行動をする人が出会うことにより、災害が発生します。
  2. 施設から不安全な部分を取り去れば、災害の82%がなくなります。
  3. 作業員が不安全な行動を止めれば、災害の94%がなくなります。
  4. 施設から不安全部分を取り去り、作業員が不安全な行動を止めれば災害の99%はなくなります。
  5. 不安全な物と人が存在するのは、作業員自体の問題だけでなく、組織にも欠陥があり、管理が機能していないからです。
(注: 図は中央労働災害防止協会編「安全衛生推進者必須」平成9年版を参考にした。数値は小数点以下を四捨五入した)

8. ハインリッヒの法則

1対29対300の法則 ドミノ理論 
  1. 米国の保険会社の研究部長、H.W.Heinrichは、半世紀に渡る55万件の災害データを調査し、左図に示す、いわゆるHeinrichの「300:29:1」法則を1931年に発表しました。死亡を含む重大災害が1件発生する場合、その陰には29件の軽傷の事故が起きており、更に300件の潜在的な事故、いあゆるヒヤリ・ハット(ニアミス)事故が発生していると言います。またHeinrichは、ニアミスを含む全ての事故の88%は不安全な行動、10%が不安全な設備によるとしています。
  2. 1969年に同じく米国の保険会社の、Frank E. Birdは、297社のおよそ175万件の事故を分析し、1件の重大事故に対し、10件の軽傷事故、30件の物損事故、600件のニアミスがあると言います。
  3. 1974年にTyeとPearsonは、英国産業の百万件の事故を調べ、重大事故1件に対し、10件の軽傷事故、50件の応急処置、80件の物損事故、400件のニアミスと報告しています。
  4. 右図は、H.W.Heinrichのドミノ理論を示します。A図において、(1)社会的または家庭的欠陥、(2)個人的欠陥、(3)不安全な状態または行動、(4)事故、(5)災害を表します。いずれかが倒れると、B図のようにドミノの連鎖反応が起こり、災害になります。C図のように、(3)不安全な状態か行動を取り去れば事故は発生しません。
  5. ハインリッヒはあまりに個人の責任を重視しているので、最近は彼の5個の駒のうち、最初の2個を次の様に書き換えています。(1)管理不足、(2)被管理物の不良。 先ず、組織による管理がうまく機能していないのが事故の根本原因である、次に4項目の被管理物、すなわち、使用する材料、運転する設備、作業する環境、人々、の管理がなされていない、とするものです。4項目の幾つかの管理不良が原因で不安全な行動や状態が生じます。
 

9. 不安全な行動

  1. 作業員はPPE(自分の身を守る装備 Personal Protective Equipment)を身に着けます。不安全な行動はPPEの無視に始まります。
  2. 不安全な行動を矯正するには、安全指導員が絶えず現場パトロールをして指導します。なお、不安全行動を指摘する前に大事なことは、安全な行動をする作業者を褒めることです。
  3. 作業者が不安全であることを知らずに不安全な行動を行うのは教育、訓練を徹底すれば解決できます。問題は、してはならないことを知っていながら行う場合です。
  4. 職場全体の雰囲気として規則が守られず、自分だけ守るのは格好が悪いと思う。これは、全員が納得して規則を守る企業風土を作るしか方法はありません。例えば、規則違反時の危険を分かり易く説明する、さらに、危険物については消火訓練、安全帯についてはモデルの墜落実験、安全眼鏡については眼帯着用の歩行実験を行うなど具体的な教育を行います。
  5. 特定の人物やグループがルールを守らない。例えば規定のPPE(個人保護具)を身に付けない。この場合、本人に注意するだけでなくその属する組織に報告します。理由のない反抗的態度を取り、どうしても規則に従わない場合は、一時的に現場から退場を命じます。
  6. 手元の工具で間に合わせたい、遠回りは面倒だ、安全帯を使うのは面倒だ、と目先のことだけを考え、手を抜く場合があります。定められた規則や手順を省略(近道本能と言う)して得られる利益よりも、手抜き事故の損失の方が極度に大きいことを考えさせる訓練が必要です。KYT(危険予知訓練)はその一法です。
  7. 手摺を使わずに階段を上り下りするなど、日常の習慣から無意識のうちに不安全な行動をする場合があります。安全意識を高め、現場規則を守らせるだけでなく、手摺確保の掲示板やセンサー警報装置を設けるなど設備面の対策をして習慣付けます。高い所から飛び降りる、現場で緊急事態でもないのに走るなども同様です。
  8. 上記の、不安全な行動に含まれない行動があります。故意の(例えば保険金目当ての)事故や、災害を起こす目的のサボタージュがその例です。
  9. 参考:保護具(参考HP 「安全管理」http://www1.harenet.ne.jp/~noriaki/link77-3.htmlによる。)
     人への安全対策として、保護具の着用がありますが、保護具の着用を安全性設計と、設備安全対策の代用にしてはなりません。最終手段として併用すべき安全対策です。主な保護具には、次のものがあります。
    頭:保安帽、安全帽、ヘルメット  目:眼鏡。ゴーグル  耳:防音保護具(耳せん、マフ)  顔:防塵面、溶接用面   手:ゴム手袋、皮製手袋、腕カバー   呼吸器:空気呼吸器、酸素呼吸器、送器マスク  足:安全靴、長靴、すね当て、甲プロテクター   皮膚:防毒衣、防熱衣、作業衣、前掛け   身体:高所用安全ベルト

10. 不安全な設備

  1. 安全対策用の個人的装備(PPE)を提供し、安全な作業環境と作業設備を準備するのは雇用者の責任です。先ず、身の回りをきちんと整え、次いで作業環境の4S(整理、整頓、清掃、清潔)を行います。整頓された、清潔な(clean and orderly)作業場では、作業員も安全な行動をします。(参考:コソ泥や放火の多い地域は、地域内にごみや自転車が放置されている、自治会の看板が更新されていないなど環境整備が悪い所とのこと)。
  2. 安全のために設置された装置や表示を、勝手に撤去することは犯罪であることを全員に認識させます。安全の設備が作業の邪魔になる場合は、別の安全設備を検討します。
  3. 不安全な箇所がすぐに改善されるとは限りません。そのような場所には警告の掲示板を立て、仮の立ち入り禁止区域を指定します。さらに安全な施設の完成期日を示します。
  4. 設備や機器は、製造規格や現場受け入れ検査に合格したもので、かつ人間工学を考慮した配置や構造で、ヒューマンエラーを防止できるものとします。

11. 安全衛生体制と規則

  1. 現場の安全衛生管理は、ラインが計画し実行し確認し、責任を負います。安全作業指示(STA)やツール・ボックス・ミーティング(TBM)はラインの監督者、班長の仕事です。
  2. ラインの責任者は、安全のための施設、保護具、規則、基準、許認可用紙を準備し、作業員の教育をします。
  3. 安全衛生推進者または安全指導員はスタッフとして、ラインの安全活動を支援します。

12. 安全衛生教育

  1. 現場に新しく参加する作業員に対して、3時間をかけて安全の重要性、現場の特長、危険個所の説明などを行います。教材として、その現場を対象として作成した安全小冊子を作成しておけば非常に役立ちます。
  2. 作業員の教育として、月に1時間以上、従事する業務についての知識の向上を図り、専門的な技能の訓練をします。
  3. 更に、作業員の安全意識の向上のために、一般的な安全教育の他に、TBMの時間などに危険予知訓練(KYT)を行います。

13. 日常の安全衛生推進活動(例) 

   マンネリにならないようにする。常に新機軸を企画すること。

  1. ラジオ体操と朝礼(当番制): 各現場毎に、毎朝10分間位行う。朝礼は安全を主体に行う。
  2. 現場安全パトロール: 毎朝、現場責任者と安全担当者が現場全体(広い現場は区域に分ける)を視察する。
  3. 週に一回、工事業者も参加して総合安全パトロールを行う。パトロールの重点項目を出発前に明示する。パトロール結果はレポートにまとめて関係者に配布する。安全対応チャートはその例である。
  4. Follow-Upパトロール: 総合安全パトロールの三日後にFollow-Upのため、安全担当者全員がパトロールする。
  5. 安全垂れ幕、安全ポスター、安全掲示板、安全旗を作製し、定期的に交換する。
  6. 安全衛生集会: 月に1回、全員が集まり、安全担当者が主催して安全講和、安全訓練などを行う。
  7. 一斉構内清掃日: 週に一回30分間、4S運動の一環として全員が現場内のゴミ、不要物を整理し不要物は廃棄する。
  8. 安全衛生会議: 月に1回、定期的にすべての関係者、責任者が集まり、工事の進捗に伴う問題点や対策を協議する。
  9. 月間安全衛生計画: 月に1回各業者毎に作成し関係先に配布する。当月の方針、活動予定、イベントを紹介する。
  10. STAとTBM: 監督者はSTAにより、班長はTBMを通じて、部下を安全指導する。
  11. 安全時間データ: 現場入口に本日までの安全記録を掲示する。そのために毎日、現場全員の作業時間を集計する。
  12. ヒヤリ・ハット報告: 業者の安全推進員は、ヒヤリ・ハットが発生したら直ちに安全責任者に報告する。
  13. 安全提案制度: KYTにより予知した事故を防止するため、提案をさせる。墜落防止とかテーマを決めて定期的に行う。
  14. 事故報告: 事故が発生したら、責任者は直ちに通知するとともに、事故の状況、原因、対策をまとめ二日以内に報告する。
  15. 安全記念品: 安全記録達成日(例えば10万時間、50万時間)に全員に記念品を配る。
  16. 褒章制度: 安全対応チャートがある値以上になった月には、安全衛生集会においてくじ引きにより賞品を渡す。

14. 日常の心構え(最近、読んだ本、感じたことの覚え書き)

 仕事をしていて、「何か変だ」と感じたら、時間を置かずにもう一度、その仕事をじっくりと見直すこと、仲間がおればその仲間に感じたことを述べて、意見を聞くこと。
 今までやってきたことだから、大丈夫だろうとか、他の人がチェックしてくれるから、心配ないだろうとか、チームで行う作業だから、誰かがするだろうとか、みんなが賛成しているのに自分だけ反対とは言えないとか、自分だけで納得してはいけない。(日本機械学会、産業機械と安全部門ニュースレターNo.27、リスクへの勘、山田貴久氏)

 「人間はミスをする。」・・・。設計を担当していたとき「自分の書いた図面には必ず間違いがあるという謙虚さで図面のチェックをせよと言われた。どうしても「私はミスはしない」と自信を持ち勝ちである。
 
 一回目のチェックで設計不良5%が3%になり、2回目、の3回目で0.5%になる。図面のチェックは上司の仕事だとそのまま上司に提出してはいけない。図面に一番詳しいのは自分であり、後工程に不良品を渡さないという気概を持って仕事をする。
 図面を書き終えた日は、頭は過熱状態にある。図面のチェックは頭を冷やして、一晩寝てから行う。根本的な誤りやつまらない勘違いがよく見えてくる。翌日まで待てないときは、急ぐ仕事をチェック前に入れて、頭を切り換える。昼休みを入れたりコーヒーブレイクをするだけでも効果がある。
 時間に追われて仕事をするのではなく、時間を追いかける仕事の手順・段取りをすること。
(参考:渡辺康博「基礎から学ぶ実用機械の設計」オーム社平成24年2月発行)

「本質安全設計」についての分かりやすい説明の図。

上図は、次のページからコピーしたものである。クリックすると、拡大する。
タイトルは「人と機械が共存する環境での本質安全」執筆者;石田 豊、Alfred Neudorferら。
http://www.idec.com/jpja/technology_solution/tech_resources/pdfs1/HIS_2002_03.pdf


上図は、一般財団法人 機械振興協会 技術研究所の
「機械の安全・信頼性に関するかんどころ」に掲載された資料です
「設計方法の紹介 第1回、機械設計のポイント、第2回、安全設計のポイント
に基づきます。


参考資料:工場の安全管理/教育に関する、分かりやすい解説を紹介します。(2012年4月9日)
  大竹技術士事務所 http://www13.plala.or.jp/OGAJ/SH.htm
「安全管理の部屋」です。http://www13.plala.or.jp/OGAJ/index.html

トップへ |Project FKDのホームページへ日本語のトップページへ