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「背割れ」と「腹割れ」を折り分ける(2) 

どちらを選ぶべきか?



1. 「背割れ」の長所と短所

「背割れ」とは「紙の端が表面にあらわれる」ことです。表裏違う色で折った場合は、裏の色が表面に出てしまうので、たしかに見栄えの点では余分な線が出ず滑らかな「腹割れ」の方が優れていると言えます。


しかし「背割れ」のメリットがあります。それは「紙の端」を有効に利用できるという点です。「背割れ」と「腹割れ」では特に頭部の造型の自由度がかなり違います。紙の端があれば耳や目などを折り出すことが容易です。「背割れ」構造を利用した頭部造型をいくつか例示します(図1)。造形のバリエーションの豊かさがわかると思います。

「背割れ」の頭部造形例(図1)
アイベックス
虎 龍


「腹割れ」の場合は、比較的あっさりした造形になる傾向があります。 もちろんこれは頭部だけでなく胴体にも適用されることで、翼の折り出し(ペガサス、ドラゴン)や模様折り(シマウマなど)などは「背割れ」構造でないとかなり困難です。


2. 「腹割れ」の長所と短所

「腹割れ」の長所は、背中に余分な線がでず、見栄えの点で非常に滑らかで美しいという点です。「腹割れ」の作品が好意的に受けとめられる傾向があるのは、ひとえにこの点があるからです。しかし安易に「腹割れ」を選択すると嵌ってしまう陥穽があります。

まずは「背割れ」の長所の裏返しで、頭部のバリエーションが少ないことです。紙の端を使えないので、内部カドを有効に使わなくてはなりません(これを克服する斬新な方法を提示した作品がデビッド・ブリル氏の「サイ」です。頭部をひねり上下を逆転させるという衝撃の一発芸でした)。

そしてもう1つの問題は「足」です。普通にカドを中割り折りすると、胴体の下から足が生えたようになってしまいます(図2。※架空の基本形)。私は勝手に「獅子舞スタイル」と呼んでますが(苦笑)。一昔前の動物折り紙にはこういう表現をよく見かけました。これカッコ悪いですよね? 肩の筋肉の表現がまったくありません。


「腹割れ」でよくある「獅子舞スタイル」(図2)
図2(架空の基本形)


そこで、足を外側から出す工夫を紹介します(図3)。イメージとしては、ひっくり返して内側の紙を表に出すという作業になるわけですが、いくつかバリエーションは考えられます。興味深いのは、後ろ足の形を工夫した影響で尻尾がユニークな形状になっているところですね。

「腹割れ」の足の出し方・作例(図3)
図3(猫の下半身)
図3(狼の下半身)


基本形の構造自体がさまざまでパターンの類型化は困難です。このあたりはケースバイケースで試行錯誤するほかありません。


伝統的に従来の動物作品は「背割れ」作品が主流でした。「腹割れ」はまだまだ技術開発が進んでいない部分があるので、出来さえすれば、独創性でオリジナリティのあるフォルムになる可能性は高いです。


3. で、どっちを選ぶ?

結論を述べれば、「背割れ」「腹割れ」それぞれに長所、短所があるわけですから、目的に応じて使い分けるべきということになります。例えば、模様の折り出しや背中が翼が生えているような動物を折る場合は「背割れ」を当然選ぶことになるでしょう。


ただ「腹割れ」の見栄えのよさは何ものにもかえがたい魅力ですので、頭部と足の出し方について説得力のある造形が可能であるなら「腹割れ」を選びたいと思っています。そのかわり技術的難度は高いです。


では、最後に「山羊」の顛末を。「背割れ」「腹割れ」の両方の造形ができたわけですが、ここは殆ど迷う余地なく「腹割れ」を採用することにしました。理由は以下の2点です。

(1)背中に余計な線がなくてキレイ。
(2)頭部の造形が、ありがちなものでない。

「山羊」
ヤギ(完成形)


大事なのは、目的に応じて2つの手法を折り分けられるような技術の習得でしょう。参考にしていただければ幸いです。

(2011/6/4)

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その1「同じ作品を折り分けると・・・」