天の時

 とにかく女癖が悪いのがいけないとよく言われる。
 しかし思うに、男としては、至極健全である。
 どこかに面白い男はいないものか。
 面白い男がいたならば、そいつの後を追うのもよい。
 女の髪に悪戯をしながら、郭嘉は目を閉じて、真っ青な空に思いを馳せた。



 天下を望む男か、それとも安寧を望む男か、はっきりとしない男がいる。
 漢の復興など、ただでできるものかと男は考えている。
 根底から作り直さねば、どうにもならないものだと。
 少なくとも、曹操という男は世間が嫌いではなかったようである。



 曹操の傍には生真面目な男がいた。
 さて、乱世をいかに平らげるか。
 面白いも面白くもないも、あったものではない。
 しかし軍略は面白い。さて、これをいかに使ったものか。
 荀攸と言う男は、生真面目に考えるのであった。



 いつもいつもと文句を言う男がいる。
「あなたとという人は、女の尻を追っかけて遊んでいるようにしか見えませんが」
 荀ケという男は、いつも決まってこう言う。
 それもいつしか、楽しいことになっているようにも思える。



 いつもいつも、女癖が悪いと言われる。
 愚痴を言う男を眺めて、生真面目な男が苦笑する。
 言われた男は気にも留めずに書簡を広げる。
「女の尻ばかりを追いかけている」
 言われた男は振り返る。
「なに、追いかけるのは女の尻だけではない。曹孟徳という男の後を追いかけるのも面白い」
 生真面目な男が珍しく笑う。
 愚痴を言う男も、生真面目な男も、女癖の悪い男も、面白い男に惹かれてここにいる。
 さてこそ、面白いのは人の縁。
「曹孟徳という男の後を追いかけていると、いつの間にか天下というやつの尻を追いかけさせられている」



 面白いのは、時の運。