SoftCoral    潜水物理1.  水中環境

1. 圧力
※1998年に計量法が改正され、日本国内でも世界標準のSI単位系に移行されることとなった。しかし、以下の説明では便宜上、「kg/cm」を使用する。
  
1-1. 大気圧
地球は大気に覆われている。このため地球の表面は空気の重さによる圧力を受けている。これを大気圧と呼ぶ。
大気圧は1cmに加わる重さであり、大気柱の重量である。
圧力単位で表すと約1kg/cmとなる。

大気圧=1気圧≒1kg/cm2≒0.098MPa
     
1-2. 水圧
1cmの純粋な水の重量は1gである。水中においては水の重量を圧力として受けることとなり、深度に応じて増加する。この圧力を水圧という。10mの水中においては1cm×1000の水の重量が水圧になり、それは1kg/cm(=1気圧)である。

深度10mごとに水圧は1気圧増加する。
     
1-3. 周囲圧
ダイバーの身体に加わる圧力を言う。陸上においては水圧の影響がないため、周囲圧=大気圧であるが、水中においては周囲圧=大気圧+水圧となる。

[周囲圧]
 海面(陸上) :1気圧(1kg/cm2
 深度10m  :2気圧(2kg/cm2
 深度20m  :3気圧(3kg/cm2
 深度30m  :4気圧(4kg/cm2
 深度40m  :5気圧(5kg/cm2
 深度50m  :6気圧(6kg/cm2
 深度60m  :7気圧(7kg/cm2
 深度70m  :8気圧(8kg/cm2
 深度80    :9気圧(9kg/cm2
 深度90m  :10気圧(10kg/cm2
 深度100m  :11気圧(11kg/cm2

 
1-4. ゲージ圧
タンクの内圧を測定する計器類は大気圧を含まない。これをゲージ圧という。
1-5. 充填圧
ダイビング開始前の未使用タンクのゲージ圧をいう。近年のタンク充填圧は200気圧のものがほとんどである。
(200気圧=200kg/cm≒19.6Mpa)
1-6. 残圧
ダイビング中のタンクのゲージ圧、あるいはダイビング終了後のタンクゲージ圧をいう。空気残量を圧力にて判断する。通常50気圧以上で浮上を開始する。
1-7. 申告圧
ファンダイビングにおいて安全管理の観点から、グループメンバーがガイドに知らせなければならない残圧レベル。一般的には70気圧。
1-8. 高圧
レギュレータ(1stステージ)から残圧計に至るホースの中はタンク内圧と同じ圧力となっている。この圧力を高圧と呼び、ホースを高圧ホースと呼ぶ。
1-9. 中圧
レギュレータ(1stステージ)から2ndステージおよびBC、オクトパスなどへ供給される空気は、1stステージ内で”水圧+8気圧”に減圧された圧力となっている。この圧力を中圧と呼び、ホースを中圧ホースと呼ぶ。
  
2. 浮力
2-1. 比重
純粋な水の重さを1とし、同じ体積のほかの物体の重さを比較したときの比率を比重という。平均的な淡水の比重は1.01g/cm、平均的な海水の比重は1.04g/cmである。
2-2. +浮力
物体(ダイバーの身体)が海水より比重が軽ければ浮き上がる。これを+浮力と呼ぶ。水面遊泳および水面待機時はBCにエアーを入れ+浮力として体力のロスを防ぐ。水中では通常、+浮力にはしない。
水深の浅いところで浮力が+になっていると意図せぬ急浮上となり危険なので注意する。(肺圧外傷、船との衝突など)
浮上時にBCにエアーを入れて、+浮力で浮上する方法(ボイヤンシーコントロールアセント)という浮上方法もあるが、水深が浅くなるほどBCの膨張率が上がり浮上速度が速くなるため、エアー排出量を十分注意しながら行なう。
正規の浮上方法はBCのエアーを全て抜き、完全な−浮力としてフィン泳力で浮上する。
2-3. −浮力
物体(ダイバーの身体)が海水より比重が重ければ沈む。これを−浮力という。
潜降時はBCのエアーを抜き、−浮力にして下降する。適正ウエイトを心がけ、潜降時の急降下は危険なので潜降速度に注意する。(急激なスクイズ、珊瑚等への激突、下にいるダイバーとの激突)
2-4. 中性浮力
物体(ダイバーの身体)が海水と比重が等しければ浮き沈みがなくその場に漂うことができる。これを中性浮力といい、+浮力と−浮力との境界の状態である。ダイバーは通常、潜水中は中性浮力を心がけ、BCによる浮力調整を行なう。
深度によってダイバーに加わる周囲圧が変化し、BC、ウエットスーツの体積変化により浮力は変わる。常に浮力調整は意識すること。
3.
3-1. 光の屈折
空気と水との屈折率は1.33(=4/3)である。マスク越しに見える物体はマスク内の空気と海水との光の屈折により、4/3倍の大きさに見え、3/4の距離に位置しているように見える。(望遠効果)
3-2. 光の反射
太陽光線全てが水中に進入するわけではない。水面に対して斜めの角度から照射された光は反射し水中に入りにくく、水中に入ってくる光の多くは直角に照射された光である。よって太陽の位置が低い時間帯(朝、夕)では、陸上に比較して水中は暗い。水中が最も明るいとされるのは正午付近のおおよそ11時から14時である。
3-3. 光の吸収
3-3-1.明るさの変化
深度が増すごとに光は水に吸収され、明るさは水深4.5mで陸上の1/4、水深15mで陸上の1/8になる。
3-3-2.色彩の変化
太陽の光は7色のそれぞれ波長の異なるスペクトルから成り立っている。水はこれらのスペクトルを選択的に吸収する。水深が増すごとに波長の長いから吸収され、順に青緑、そしては最後まで残りが先に吸収される。(フィルター効果)
色は吸収されるとその物体は黒ずんで見える。ただし、物質によっては色が変化するものもある。(下記例を参照)
  
例: 血液
陸上ではあきらかに赤い血が滴り落ちていた餌付け用の魚を水中に持ち込み、ちぎって見ると血液の色が緑色になっているのがわかる。血液は人工的に造られた染料と異なり単色の液体ではない。水中において赤が吸収されたときに潜在している緑の色素が表面化したためである。
例: 黄色フィン
ファッション性のあるカラーフィンが販売されている。このうち黄色のフィンは水中では真っ白に見えることがある。黄色が吸収されゴム素材色が表面化したものである。
   
【色彩変化の概念図】
これはおおよその目安である。色彩の変化度合いは天候や海水の透明度によって変わる。
波長(nm) 10〜380 380〜430 430〜460 460〜500 500〜570 570〜590 590〜610 610〜780 780〜106
種類 紫外線 青緑 赤外線
陸上
-3m
-6m
-9m
-12m
-15m
-18m
-21m
-24m
-27m
-30m
-33m
-36m
-39m
※自然光で写真撮影するなら、水深3m以浅でないと色再現性は得られない。
※水深3m以深で色を再現させるにはフラッシュが必要になる。
  
【色再現性の一例】
  下記写真は同一箇所で撮影したものである。水深はおおよそ-15m、天気は晴天。
フラッシュ無し                 フラッシュ使用
    
4.
空気中での音の速さは秒速340mである。これに対し、水中での音の速さは秒速1440mであり、陸上の約4倍である。人間は左右の耳が音を感じ取る時間差で音源の距離や方向を判断する。しかし、音の速さが4倍になり時間差が短くなってしまうと音源が特定しにくくなる。ボートのエンジン音が聞こえてきたら、実際に目で確認するまで気を許さないこと。
5. 水温
5-1. 水の伝導度
空気は温度が伝わりにくいが水は温度が伝わりやすい。水の熱伝導率は空気の25倍である。45℃の風呂には熱くて入れないが90℃のサウナはゆるく感じる。水中環境下においてはたとえ南の海においても断熱材によるスーツ(ウエットスーツまたはドライスーツ)が必要である。
5-2. 海水温の日変化
海の表層水温は、午前4時から8時頃までの間に最低になり、午後3時から5時頃までの間に最高になる。日変化は通常、沿岸で大きく、沖合いで小さい。季節的には夏と冬は小さく、春と秋は大きい。