回転力(遠心力)の伝達と関節の関係について
コマの原理による身体バランスの成り立ちと
身体の中心部から末端に向けての遠心的な力の伝達の関係について説明をしました。
私たちの身体によって行われる動作や作業は、
多くの場合、身体の中心(体幹部)に近い部位で発生した力を
作用部まで効率よく伝達させることによって成り立っています。
例えば、ボールを投げようと思えば、
背中や腰で発生した力を肩→腕→手を経由してボールまで伝達させ、
ボールに推進力を与えています。
もちろん、腰や背中の力を利用しなくても、
肩や腕だけの力だけでもボールは投げることはできますが、
その場合、十分なボールの推進力が得られなかったり、
肩・肘・手首・指などの関節や、肩・腕の筋肉などの負担が大きくなって、
反復を繰り返すうちにそれらを痛めてしまう可能性が高くなったりします。
ボール投げに限らず、他の動作や作業についても同様です。
どんなに小さな細かい動作や作業であっても、
身体の中心(体幹)に近い部分をうまくコントロールことができなければ、
うまくいかなかったり、ケガや痛み障害などの原因となります。
関節部での力の伝達と転換
関節は、単純に言えば骨と骨のつなぎ目です。
骨と骨のつなぎ目を靭帯や関節包と呼ばれる組織が直接的につないで補強をしています。
そして、
関節を構成する骨の両方もしくは片方に、その関節をまたいでつながる筋肉が、
収縮⇔弛緩(伸び縮み)をすることによって骨が動き、
曲げ伸ばしなどの関節運動が行なわれます。
「身体の中心から末端に向けて力を伝達させる」という場合において、
関節の担う役割は、大きくふたつ挙げられると思います。
@身体の中心から末端に向けた力の伝達をできるだけムダなく伝えること
A力の伝わる方向(角度)をコントロールすること
B力→スピードへの転換
以下に@・A・Bをそれぞれ説明いたします。
@身体の中心から末端に向けた力の伝達をできるだけムダなく伝えること
皆さんは『歯車』の形はどのようなものか思い出すことができますか?
例えばふたつの歯車の片方からもう一方へ力を伝達させる場合、
ふたつの歯車は双方のの歯が
もし歯車の位置調整が不適切だったり、歯車の歯が
かみ合わせが不十分な場合には、
力の伝達にロスが生じることになります。
関節部で力の伝達にロスが生じた場合、
体幹側(=上流側)の筋肉は、より大きな力を出して
末端側(下流側)に伝えなければなりません。
例えば、
下流側の末端で最終的に10のパワーを必要とする場合、
単純に考えて上流側から10のパワーを下流側に送ってやればいいのですが、
途中、関節などで2のパワーがロスした場合、
単純に上流側は12のパワーを送らなければ、
末端に10のパワーが伝わらないことになります。
この場合、上流側の筋肉には必要以上の負担がかかることになります。
このような状態が反復されたり、長期に続いたりすることによって、
上流側の体幹に近い筋肉には疲労が蓄積され故障の原因となります。
また、関節部の力の伝達にロスがあるために、
末端側の筋肉がそのパワーを補うために働かなければならなくなる場合もあります。
例えば、
末端で10のパワーを必要とし、
途中の関節で2のパワーがロスした場合、
関節の下流側の筋肉が2のパワーを補って末端側に伝えるという
代償作用が生じる場合もあります。
しかし、下流側の筋肉は、上流側に比べて大きな力を出しにくいので、
力のロスが大きくなればなるほど
エネルギー源の枯渇や酸素不足によって疲労が蓄積されやすく、
故障の原因になる可能性が高まります。
また、
末端側の筋肉は主に、Aで説明する動作コントロールのために働く方が重要ですので、
その能力がパワー補充のために割かれたり、
必要以上のの負担によって疲労が蓄積されると、
動作のコントロロール能力が低下してしまうことになります。
A力の伝わる方向(角度)をコントロールすること
腕などを使って何らかの動作をする場合、
身体の上流側で生じた力を、動作の対象に対してどのように作用させるのかが、
その動作の正確性に大きく関与します。
例えば、野球のピッチャーならば、ボールをただ思いきり投げればいいのではなく、
狙ったコースに投げる必要があります。
テニスプレーヤーならば、飛んでくるボールをラケットに当てて、
相手に打ちかえさなければなりません。
上流からの推進力をどの位置で対象に作用させるのか、
関節はそれをコントロールするための重要な存在です。
動作コントロールに対する関節の役割は、
上流側から伝わってきたパワーを適切な方向に転換して伝達させることです。
そして、関節の位置コントロールの役割は、
その関節を動かすための筋肉によって調整されています。
複数の筋肉の収縮⇔弛緩によって関節の角度や回転、傾きなどが調整され、
どの方向に力を伝達させるのかが決定されます。
通常、関節における力の伝達方向の転換は、
その関節の動く範囲(関節の可動範囲)の中で行われます。
但し、
何らかの原因によって関節の可動範囲が制限されてしまえば、
いくら筋肉が頑張っても、適切なコントロール作用は発揮できません。
その際、私たちの身体は他の部位(関節等)の代償によって、
動作のコントロール性を確保しようとします。
例えば、
末端の作用部位までに、複数の関節を経由する場合、
その中のどれかの関節に動作制限があるとすると、
それを補うために、他の関節や、それをコントロールするための筋肉に
余計な負担をかけることになります。
その結果、
関節や筋肉に負担や疲労が蓄積されて、
それらの故障を生み出す原因になることがあります。
従いまして、
関節の正常な可動範囲を最大限に確保できるかどうかは、
動作のパフォーマンスを引き出し、
故障を防ぐことができるかどうかのカギになります。
B力→スピードへの転換
この役割は@の役割に類似します。
@で説明した歯車における力の伝達ですが、
これが大小二つの歯車の場合ではどうでしょう。
大きい歯車→小さい歯車に力を伝達させたい場合、
例えば
上流側:大きい歯車が1/4回転⇒下流側:小さい歯車1回転
だと仮定すると、
上流側の大きい歯車が1回転する間に、
小さい歯車は4回転することになります。
これは上流側の歯車を1回転させる力を下流側の歯車4回転分の
スピードに転換させたことになります。
関節によっては、身体動作をよりスムーズに行うために、
このような力の伝達作用が働くものもあります。
この際、@の場合と同様に、
歯車のかみ合わせに問題があり、力の伝達にロスがある場合、
上流側の筋肉は末端側のスピードを確保するために
より大きな力を必要としたり、
関節部でロスしたスピードを補うために、
末端側の筋肉が必要以上に働く結果、
負担や疲労蓄積などによって、故障の原因となる可能性が高まります。
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