重力・求心・遠心バランス


『身体のバランスが崩れた時、

身体は様々なトラブルに見舞われやすい。』

今までに一度は耳にしたことがありそうな理屈ですね。

例えばひどい腰痛になったとき、

慢性的な肩こりや身体の重だるさに悩まされている場合、

誰でも一度は「身体のバランス」について考えてみたことがあるのではないでしょうか?


皆さんが「 身体のバランス」と言われてまず思い浮かべるのは

背骨や骨盤など、骨格のことかもしれません。

確かに、背骨や骨盤が歪んでいると言われれば、

「身体のバランス」は悪いだろうと思いますし、

身体の調子が悪くなるのも、なんとなく納得できるような気もします。

ですが、なぜ背骨や骨盤が歪んでいると身体の調子が悪くなるのでしょうか?


一言で「身体のバランス」と言われても、

具体的にどのようなことを意味しているのか、

そして、それがどのように身体のトラブルと関わるのか・・・・

それが理解できていれば「身体がいうことをきかない」のはなぜか、

納得しやすいですし、対処もしやすくなるでしょう。

そのために、

「身体のバランス」はどのような要素で成り立っているのかを

『機能的』に考える必要があると思います。



『身体の機能的なバランス』とは


突然ですが、皆さんは「コマ回し」をしたことはありますか?

実際にやってみたことはなくても、見たことならあるとは思いますが、

「コマ」が勢いよく回転している時、

コマは非常にバランスよく安定した状態で立っています。

回転の勢いが衰えてくると、

コマの回転はブレ始め、そしてバランスを保てなくなり、倒れます。

ところで、

「コマ」を回転していない状態で立たせてみるとどうでしょうか?

当然ながら無理なことです。

「コマ」がいくら左右対称の形であっても、

静止した状態では立っていることはできません。

「コマ」は勢いよく回転しているからこそ軸が安定し、立っていられるのです。


私は、人間の身体の軸(バランス)は、

この「コマ」と同じような原理で成り立っていると考えています。

もちろん人間の身体は実際、常に回転しているわけではありません。

しかし、

身体の様々な部分が無意識的に絶えず働きながら『軸』を構成し、

身体バランスの安定を維持しています。

安定した軸が回転力(遠心力)をブレなく生み出す基になり、

また、回転力(遠心力)の伝達がスムーズに行われることで、

『軸』(バランス)の安定が得られるようになります。


当院では、この「軸」と「回転」の関係こそが、

人間の機能的なバランスの根本であると考えています。


《身体バランス⇒軸と回転の関係》

@重力をコントロールする機能⇒軸の構成

A回転力(遠心力)をコントロールする機能

B「重力コントロール機能」と「回転力(遠心力)コントロール機能」の『協調』




@重力をコントロールする機能

重力に対抗して自分自身の身体を支え、活動する機能です。

私たちは、地球上にいる限り、常に重力の支配を受けます。

私たちが、何かをしたい、しなければならないと思えば、

重力に逆らって身体を自分自身で支持し、活動をしなければならないのです。

何らかの原因で重力への対抗が困難になったとき、

私たちに身体には様々な不調が発生し、

それが行動・動作の目的達成を妨害することになります。


A:姿勢保持・状態維持

骨や筋肉などの働きによって行われ、

立つ、座るなどの状態を維持します。
【⇒姿勢保持】

姿勢が保持されている状態では動きを伴っておりませんが、

身体は重力との拮抗状態を保つために絶えず働いています。

【⇒静的動作】

疲労の蓄積などで、姿勢保持の機能がうまく働かない場合、

腰痛に代表されるような「痛み」の原因となります。



B:重力に逆らった方向に行う動作

身体各部の前後方向への動作がこれに相当します。

例えば

腕や足などをあげたり、おろしたりする動作や、

身体を前や後ろに傾ける動作(おじぎの動作)などがあります。

同じ動作を反復して行えば疲労が蓄積しやすくなります。

動きを伴う動作【⇒動的動作】


A回転力(遠心力)をコントロールする機能


回転力(遠心力)は、

身体の中心から末端(手、足)に向かって伝わる力です。

主に何かの「動作」を行おうとする際に生じ、

体幹(体の中心線)から末端(手、足)に向かって力を伝達させます。

ボールを投げる、ラケットを振る、歩く、走るなど、

全ての手足を使った動作で回転力(遠心力)は発生します。


回転力(遠心力)のコントロールがうまく働かない場合、

筋肉、腱、関節(靭帯)などに余計な負担がかかり、故障(痛み)の原因となります。



B「重力コントロール機能」と「回転力(遠心力)コントロール機能」の

『協調』


様々な「痛み」など、身体のトラブルの原因のとして一番多いのは、

この協調機能が失調した時だと思われます。

人間の身体の動作は、無意識的に(○○しながら△△する)というような

個々の動作が複合してひとつの動作・行動を作り上げることが多い特徴があります。

たとえば、

椅子に座ってパソコンで仕事をする場合、

イスの上で身体を支えながら、キーボードを打ったり、マウスを操作したりします。

また、スポーツでも、

立って身体を支えた状態からゴルフクラブを振ったり、

走りながら方向を変えたりなどがあります。


人間の動作、行動を細かく分析してみると、

重力のコントロール機能が軸となり、

回転力(遠心力)のコントロール機能で手や足を目標部に到達させたり、

発生した力を作用部に伝達させたりして、

ひとつの動作、行動を作り上げていることがわかります。


この協調機能がうまくいかなくなった時、

身体は最もトラブルが発生しやすい状態であると考えられます。

例えば、

姿勢の悪い状態でパソコン作業を長時間行った場合、

腱鞘炎など、手のトラブルが発生しやすくなることが考えられます。

また、股関節が固く、足を自由な方向に調整できない状態でランニングした場合、

膝のトラブルが発生しやすい可能性があります。

(個々のケースに具体的説明につきましては、各症状の解説をご覧ください。)


ところで、立位、座位で行う作業は、

姿勢保持がされた状態から、何らかの動作・作業を行うわけですが、

その際、「静的動作」である姿勢保持(重力コントロール)を土台にして

「動的動作」である動作・作業(遠心運動)が行われています。

その際、姿勢保持(土台)の不安定さは

動作・作業(遠心運動)の不安定さ(ブレ)を招きやすく、

ケガやトラブルのの原因となる場合があります。


さらに、

上記したような構造的トラブルばかりでなく、

身体の内的なトラブルも生じやすくなりますが、

これについては項を改めて説明したいと思います。



#重心と内的なバランスについて


「起き上がり小法師(こぼし)」という玩具をご存知でしょうか?

ダルマが有名ですが、
押して倒そうとしても、すぐに起き上がってくる人形のことです。


この人形は底の部分のおもりが重心となって、

何度倒されても起き上がってくるあの動きが生まれます。

そして、おもりの重さ、位置などによって、

すぐにぱっと起き上がり、動揺のほとんどないものから、

ゆっくりと動揺を繰り返しながら徐々に安定していくものもあります。

また、重りの重さが足りなかったり、重心の位置が高すぎたりすると、

倒れたまま起き上がれなくなってしまいます。


当院では、

人間の内的なバランスもこれと同じような原理で成り立っていると考えます。

しかしながら、

もちろん、私たちの身体の中には実際におもりが入っているわけではありません。

また、体重の重い人の方が重心が安定しているとは限りません。

では、人間の重心はどのように形成されるのかといいますと、

「身体のバランスによって」形成されていると考えます。

そして、身体のバランスは上記した、

「重力へのコントロール機能」と「回転遠心力へのコントロール機能」

の複合によって成り立っていると考えます。

すなわちこれも上記した『コマの原理』です。


重心バランスが安定することによって、

身体の諸機能は安定して発揮されることができます。


この重心バランスが崩れたとき様々な不調が生じやすくなるのですが、

主に身体の諸機能の調整がうまくいかなくなります。

身体・内臓機能のリズムが崩れたり、

身体感覚・内臓感覚の違和感が出現したりします。


前者は例えば睡眠、月経、排便などに関係し、

後者にはめまい、耳鳴り、胃もたれ、息苦しさなどが例に挙げられます。


つまり、重心とは内的バランスに対するコントロールの要と言えると思います。

その意味で、重心・内的バランスは『求心力』と言い換えることもできます。


また、気分的な不安定さもこの『求心力』が深く関係します。

例えば精神的な揺らぎを「動揺する」と表現しますが、

これは「起き上がりこぼし」が安定せずにゆらゆら揺れている状態を

想像していただければわかりやすいでしょう。

重心が安定しなければ動揺はなかなか収まりません。


これらの重心・内的バランスの失調を改善させ「求心力」を高めるためには

まず「身体バランス」を改善させることが重要です。

これは前述したように重力と回転遠心力のコントロール機能がカギとなります。



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