朱雀正道 homepage sujaku ドン・デリーロ『ボディ・アーティスト』進行形読書ノート

ドン・デリーロ『ボディ・アーティスト』進行形読書ノート

どうしてだろう、世の中にたくさんあるお話とこの小説は似ていない。不思議なくらい似ていません。ページを開くと、男と女がキッチンでぐずぐず言っていて、仲が悪いわけではないけれどちっとも噛みあっていなくって、そんなぎくしゃくした光景を、まのあたりにするんです。文章がまたひちめんどくさく、話は進んでいるんだか進んでいないんだかわからない。なんだ、そんなつまらない小説だったら、さっさと放り投げちゃえばいいじゃない? そうできれば、どんなにいいでしょう。できないんです。なにかがここで囁きかけているんです。それが聞こえるんです。いったいなにが書かれているのでしょう? 哀しみの克服? 神秘について? 言葉でつかまえられないことについて? 不思議な少年? なに? なに? なに???



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●ドン・デリーロ著『ボディ・アーティスト』
スクリブナー・ペーパーバック版の原著。
そして上岡伸雄さんによる新潮社刊の訳書。
ちなみにこの小説は短く、原書では本文、117ページ。
訳書では、150ページたらずの短さ。
にもかかわらず、その不思議な言葉の感覚は、
尽きせぬ魅力と、読んでも読んでも読み切れない
無限をたたみこんだような魅力を
静かに放っている。





なんで突然、デリーロなの?・・・このコーナーをはじめたきっかけと目的ようなもの・・・。





1.時は流れているようには見える・・・この不穏な書き出しは、ぼくをどこへ連れて行くのか?

2.ブルーベリーとコーヒー。・・・きみに言いたいことがあったんだが、と、かれは・・・。

3.この家のことだ、と、かれは言う。世界におびえるように。

4. かれの電話、彼女の新聞・・・なんて怖ろしい比喩なんだろう

5. あなたは、かれらの名前を知る。その新聞記事で、はじめて。



6.尖塔が吹き飛ばされた教会



7.It was always as if.



8.餌台という境界

9.Izabel said,"This man hated who he was."
Roren said, "I don't want to hear this."


10.胎児・・・兆し・・・ジタンとキャメル

11.大地の終わりの国のハイウェイに、行き交うクルマ



12.鍵とまじわり



13.かれの歩く湾曲した空間を、ローレンは遠く高みから見る

14.それがどんなパフォーマンスだったかは語らずにおこう、と、ぼくはおもった。





●ドン・デリーロ(Don DeLillo)1936年ニューヨーク、ブロンクス生まれ。23歳のときにはじめての短篇を出版して以来、12の小説とふたつの戯曲を出版。代表作に、『アメリカーナ』(原著1971年 未訳)、『ホワイト・ノイズ』(1985年 集英社刊)。『リブラ 時の秤』(1988年 文藝春秋刊)、『マオU』(1991年 未訳)、『アンダーワールド』(1997年 新潮社刊)などがある。

●ちなみに『ホワイト・ノイズ』は、大学にヒトラー学科(!)なるものを創設して全米の注目を浴び、確固たる地位を築いていった大学教授をあつかった家族小説だとか。●『リブラ 時の秤』は、ケネディ大統領暗殺の容疑者であったリー・ハーヴェイ・オズワルドを主人公にしたものらしい。●『マオU』は、噂によると、一方に毛沢東、ホメニイといった「過剰に流通した顔」を置き、他方に20年近く隠遁生活を続けてきた作家の主人公を「過剰に流通しない顔」として配置し、両者を対比させ、それによって<群衆のイメージ>をあつかっているらしい。●『アンダーワールド』は、冷戦時代の40年にわたるアメリカの歴史を描いたものと聞いている。レニー・ブルースをはじめ、シナトラ、FBI長官フーバー、ウルフマン・ジャック、チャーリー・ミンガスやチャーリー・パーカーも登場するらしい。「原子爆弾を製造するとき、いいかい、やつらは野球のボールとまったく同じ大きさの放射性核を作るんだ」だって!?? ・・・上下本の大冊で、訳書のカヴァーは、ツイン・タワー・ビルの写真をそれぞれポジとネガで扱っています。●そのほか『新潮』2002年1月号に、テロをあつかったエッセイ『崩れ落ちた未来にて』があるそうな。●ちなみに『ボディ・アーティスト』の原著刊行は、2001年で、これまで虚実をとりまぜ現代史と個人の関係をあつかい、さまざまな登場人物を絡み合わせた巨大な小説を書いてきたドン・デリーロが、とても短く、外的世界ではなく内的世界をあつかい(しかしたいへんに興味ぶかい)作品を書いたことにも注目されました。ちょっと望遠鏡をさかさまにしたような意外な印象・・・けれどもそこにはどうやら作家の創作の前進とともにある必然性が・・・。




●この連載への「進行形の感想」を、お待ちしています。 sujaku@k9.dion.ne.jp





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