ユウくんの手がごつごつになってた。
気のせいか体もがっしりしてきた。
空手に夢中なんだ、(受験生のくせに)。
ガストで、宿題見せてやったとき、
気がついた。
そういうの、わからない。
と、大根サラダうどんを食べながら、
あの日、おもった。
(ユウくんはビビンバと棒餃子)。
強くなりたいのかな?
強くなりたいの?
強くなって、どうすんだろ?
それはそうと、
きっと国立は無理だよ、ユウくん。
だって、あんた、ばかだもん。
2n+1 と 2n の意味もわかってないし。
数列もベクトルも、体力じゃ、乗り切れない。
ユウくんは陽にやけて、白い歯がきれいで、
かわいいけど。
と、窓の向こうに広がる団地を見ながら、
わたしはおもう。
かたやわたしは、数学を勉強中。
瓶の底にかすかに残ったマニュキュアをブラシですくって、
塗りたくりながら・・・。
(閉じたシグマのあいだに、あまい香りのリップがはさまってる)。
祐子は、プチ整形ねらってる、
「2万で二重だよ、そりゃ、やるっしょ」
ママはキッチンで生協の注文票にチェック入れてる。
無リンの洗濯石鹸、
遺伝子組み換えでない大豆(自家製ミソを作るんだ)、
ラズベリー・ジャム・・・。
壁の向こうには、ゴミ焼却炉。バベルの塔みたいな・・・。
ママはここに引っ越してきたときは、
せいせいしたって言ってた。
(住んでみたら住んでみたで、
いろいろあったみたいだけど)。
ちなみにママは宮崎県の大家族育ち。
「あたしはね、じぶんの母親がおばあちゃんに
いびられるのを見ながら
育ったんだよ」
(・・・あんたなんか、しあわせよ!??)
ママのかつての夢、この団地村。
わたしも、この団地村は、嫌いじゃない。
ていうか、ここしか知らない。
ユウくんは向かいの棟に住んでるし、
廊下からは、見晴らしもいいし、
必要なものはなんだってすぐ揃う。
大中だけじゃなく。
でも、いつかわたしは、この団地村を出て、
きっと電車で30分くらいの場所へ住むだろう。
いま見ている風景は、そのとき、どう見えるだろう?
この団地村、誰が作ったのかな?
その人は、いったい、どんな人?
どんな顔して、どんなことが好きで、
どんな奥さんがいて、
(どんなムスメがいて?)
どんなふうに
暮らしてるんだろ?
わたしはマックにウィルス・スキャンして、
メールをチェックする。
トモダチ × 2
メルマ × 1
エロ・メール × 1
部屋のベンジャミンの葉に、
うっすら埃がかぶってる。
ユウくんて、ばかだよな、ほんと。
(2002/1/9)
●このあいだ光が丘へ撮影に行ったら、綿谷りささんの『インストール』(河出書房新社)って小説をおもいだした。で、ちょっと、ぼくも、まねして書いてみた。へたくそで、すみません。(結局、全然違うものになっちゃったし)。それに、いま、この文章を読み直しておもったことは、こういった女子高生観って、ちょっとオヤジくさいかもね。よく知らないけど。
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