クオリア(3)前提事項: クオリア(2)
「巨大なビリヤード台」と「その上で転がるたくさんのボール」
を想像してみて欲しい。
台の上で、ボールは転がり続ける。
すべてのボールは、力学という絶対の法則に従って動いており、
決して物理法則から外れた動きをすることはない。
ときたま、他のボールと衝突することもあるが、
そのときも力学の法則に従って、
規則正しく機械的に跳ね返るだけである。
宇宙が、
「こういうボール(原子)とその運動で出来ている」
と考えてみて欲しい。
たくさんのボール(原子)が、一定の法則に従って、
永久に運動する世界だ。
このボールが、何億個、何兆個とあれば、
その運動は果てしなく複雑化していき、
ビリヤード台の上には、考えられないような、
不思議な模様が現れたりする。
ときには、その模様が、まるで意志を持つ生物のように
見えたりすることもあるだろう。
さて。
悠久の時の中、たまたま、偶然に、
そのボールの集まりが「人間の形」になったとする。
その「人間の形」をしたものが、手を動かしたり、表情を変えたりと、
さまざまなドラマを見せたとする。
だが。
実際には、その「人間の形」をしたものに、意志がないのは自明である。
だって、「人間の形」をしたものは、結局のところ、
物理法則に支配された機械的なボールの集まりに過ぎない。
「人間の形」をしたものが、
「右手を上げた!これは俺様の自由意志だ!」と叫んだとしても、
「意志なんてない。単に、機械的に動いた結果である」
と解釈するのが妥当なところだ。
「なぜキミが右手を上げたか?
そこに『意志』なんて、妄想を持ち込む必要なんかない。
そんなことは、ボールの運動で説明できる。
すべては物理法則に従って、機械的に起こったことなんだ。
たしかに、全てのボールがどう動いているかを知ることは難しいが、
究極的には『キミ』が『物理法則に従うボールの集まり』である以上、
『キミという人間が機械的な存在にすぎない』
ということは自明なことなのだ」
その考え方は正しいように思える。
だがしかし。よく考えてみて欲しい。
仮に、すべてのボールの動きを説明する科学理論があったとして、
「人間」のすべての行動について、
完璧な説明を行うことができたとしても、
それでもなお残る疑問がある。
それは、
「今、現実に『この私』が感じている『この赤』が
どこから来たのか説明がつかない」
ということだ。
結局のところ、
機械的に動くボールの集まりが、どんなに複雑化したところで、
「今、現実に起こっている『この主観的な体験』」
を生み出すなんてことはありえない。
だから、そのボールたちの動きを理論立てて追求したところで、
クオリアの問題については、何一つ解答は得られないのだ。
ところで、これまでの話は、
「世界をボール(原子)の集まり」
という古典的で単純な世界観で説明してきたが、
もちろん、最新の科学理論では、もう少し世界は複雑に出来ている。
だが、この話は、超ひも理論でも、量子論でも、
どんな最新科学理論でも原理的に同じなのだ。
というのは、結局のところ、どの科学理論でも本質的には、
「世界は、物質Xの集まりで出来ています。
そして、物質Xは、法則Yにしたがって、運動(変化)します」
ということを述べているにすぎないからだ。
つまり、理論の種類によって、
物質Xが「原子」だったり、「量子」だったり、「ひも」だったり、
法則Yがより複雑な数式だったりと、そういう違いがあるだけなのだ。
だから、
「ボールの集合という考え方では、
『なぜクオリアが発生しているのか?』を説明することができない」
ということは、どんな科学理論にも適用できてしまうし、
今後、科学がどんなに発展しようとも、同じ仕組みである限り、
クオリアの問題を解決することはできない。
これが、クオリアが科学に突きつけている問題の本質である。
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関連事項: クオリア(4)
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