「踊るんだよ」 羊男は言った。
「音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。
おいらの言っている事は分かるかい?
踊るんだ。踊り続けるんだ。何故踊るかなんて考えちゃいけない。
意味なんてもともとないんだ。そんなこと考え出したら足が停まる。
あんたは確かに疲れている。疲れて、脅えている。
誰にでもそういう時がある。
何もかもが間違っているように感じられるんだ。
だから足が停まってしまう。」
僕は目を上げて、また壁の上の影をしばらく見つめた。
「でも踊るしかないんだよ。」と羊男は続けた。
「それもとびっきり上手く踊るんだ。みんなが感心するくらいに。
――だから踊るんだよ。音楽の続く限り」
村上春樹 「ダンス・ダンス・ダンス」
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