小論文の書き方入門講座〜きりかぶ先生と満月君#7

〜大学受験小論文・AO入試のために

小論文の書き方〜六分の理性と四分の感情

満月君:誰のことを言っているんです?

きりかぶ先生:一番わかりやすいのは、官僚さ。彼らが書く文章は、大臣のために代筆した国会答弁なんかがいい例で、小論文としては形だけ合格、でも本当は不合格なんだ。ただし、その技術だけは小論文の書き方として見習ってもいい。

満月君:ボクは国会中継なんか見ないから、よくわからないんですけど、どういうことなんです?

きりかぶ先生:官僚の文章ってのはね、思考の結果として「結論」があるんじゃないんだ。彼らの場合、最初から「××政策のために、これだけ税金を使う」っていう結論を前提にして書き始めてる。その上で、この政策がさももっともで、みんなのためになるかのような証拠ばかりを集めてきて、理屈をつけるんだ。都合の悪い例は、全て無かったことにしてしまってね。

もちろん、インテリである官僚のことだから、言葉の使い方はうまいし、たぶん日本で一番たくさん情報を握っているから、証拠集めも苦にならない。その結果できあがった文章は、論理としては筋が通っているだけに、反論がしにくくて国会で通りやすいんだ。で、今までたくさんの間違った政策がごり押しされてきたんで、世の中こんなになっちゃったってわけ。

満月君:なるほど。みんな言い負かされちゃうんですね。

きりかぶ先生:お、その発言はいいぞ!どういうことかと言うと、「説得された」「理解した」ということと、「納得した」「腑に落ちた」ということは、全然違う、ってことだね。

満月君:えへへ。落とされたり持ち上げられたり、ボクも忙しいな。

きりかぶ先生:「君は本当は頭がいい」ってずっと言ってるだろ? 最初に話したように、ある物事─この場合は君だね─は、「常に」Aだったり、Bだったりはしない。まぁこの話はまたの機会にするとして話を戻すと、「君の話はクソおもしろくないけど正しい」っていうのが「理解」であって、「君の話には同感できるから正しい」っていうのが「納得」なんだよ。でね、実は前者に適したのが小論文、後者に適したのが小説や手紙なのさ。

満月君:理性に訴えるのと、感情に訴えるとの違いですね。

きりかぶ先生:すばらしい!その通り。でもね、小論文だからって、理性重視で書くのもまた、間違い。なぜかって言うと、感情なんかいらないや、って考えながら文を練ると、どうしても「読み手にわかってもらおう」って気持ちが無くなってくる。そうすると、字は汚くなるし、わかりにくい言葉や言い回しを平気で使ってしまうようになるから、理性に訴えるための肝心の「理屈」さえ相手に読み取ってもらえなくなるのさ。

逆に小説だってそうで、君の読んでた芥川センセイの作品なんか、ものすごい論理が文章の背景にあって、読者は知らず知らずそれに導かれて文を読んでる。こと文章技術に限って言えば、理性と感情は矛盾なんかしない、むしろお互いに助け合う関係にある。

満月君:あ、だから先生は、『小論文の書き方として、「意見を伝えよう」という意志を持つだけでいい』って言ったんですね!

きりかぶ先生:さえてるじゃないか! そう、何よりもまず、読み手にわかってもらおうとする意志がなければ、いい小論文なんて書けっこないんだよ。だからね、書いた後の読み返しには、まずこの「これでわかってもらえるか?」という視点が必要になってくるのさ。

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