小論文の書き方入門講座〜きりかぶ先生と満月君#10

〜大学受験小論文・AO入試のために

小論文の書き方〜君に「自己」はあるか?

満月君:じゃ「他者」や「読み手」が組み込まれてるってことをふまえて、小論文の書き方としては、どうしたらいいんですか?

きりかぶ先生:「他者」があるってことは、何がなくちゃいけないかな?

満月君:え? …自己、ですか?

きりかぶ先生:ご名答。自己がなくちゃ、他者もあり得ないからね。ということは、小論文を書いたり考えたりする前に、この「自己」がちゃあんとデキていないとダメだってことなんだ。

満月君:またわかりにくい話をしますねぇ。自己の作り方ってあるんですか。

きりかぶ先生:あるよ。だけどその前に、「自己」とはなんぞや、ってことを知らないと、作るも何もあったもんじゃない。

満月君:はぁ。

きりかぶ先生:ここで言う「自己」ってのはね、何かを食べたがったり、好き嫌いを言ったりする「自己」じゃあない。そんなもんは、ものごころがつけば誰にでもあるもんだ。そうじゃなくて、「他の誰のものでもない、自分だけの意見を、自分で考えて言える」、これが自己なんだ。

満月君:どういうことです?

きりかぶ先生:つまりね、まずある話題、それはどんなものでもいいんだけれど、それに対して「よい・わるい」「すき・きらい」「白い・黒い」などの判断を、自分でできることなんだ。

満月君:えぇっ、それだけ? …好き嫌いだけなら誰でも言えるんじゃ…?

きりかぶ先生:あわてない、あわてない。これは、判断を「自分で」できるって所にミソがあるんだよ。なぜ自分でできるかって言うと、まさに、どうしてその結論に至ったか、自分で考えたからなんだ。

満月君:う〜ん、ムズカシイ。

きりかぶ先生:逆に言おうか。「これ、どう思う?」って聞かれたとき、まず自分で答えようとしないで、人の意見ばっかり聞きたがる人や、「誰かが言ってたから」「今、はやってるから」を理由に、まるで脊髄反射のように意見を言っちゃう人には、これはできないことなんだ。こうしてできた意見というのは、一見自分の意見のように見えて、実は他人の意見をもらったものに過ぎない。つまり、自分では判断できていない、ってことなんだね。

満月君:ああ、そういうことですか。 …でも、ボクは何か意見を言おうとしても、やっぱりまだ、誰かの意見を元にしてしか言えないんですけど…。

きりかぶ先生:そりゃまぁしょうがない。まだまだ若いし、知識も経験もないんだから。でもさ、こう自分に問いかけてごらん、「どうしてこの意見に自分も賛成するのか」って。

満月君:あ、何だ、そんなことでいいんですか?

きりかぶ先生:いいとも。仮に結論が、誰かの意見そのままだったりしても、「どうしてそう思ったか」さえ自分で考えたんなら、それは立派に、君だけの意見と言えるんだ。これは山登りにたとえるなら、目指す頂上は同じでも、ルートが違えば評価されるのと同じことだよ。

満月君:へえぇ。なんだか気がラクになりました。

きりかぶ先生:だろ? だからさ、ほらよく小論文の参考書なんかで、小論文の書き方として「課題に対して賛成か反対かを決めましょう」って言ってるのは、今の話をうんとさっ引いて説いてるんだ。でもさ、これだけをナントカの一つ覚えみたいにして、小論文の書き方がわかった気になっても、できあがった答案は気の毒なぐらいおそまつになってしまう。

満月君:どうしてです?

きりかぶ先生:そりゃ、さっ引いた話だけ「覚え」て、ラクを決め込んだからさ。

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